ルーズな経費処理の元凶は社長だった オーナー企業の「良い私物化」と「悪い私物化」

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社用車ベンツの私物化や社有ゴルフ会員権の購入など

   私は彼女の言い分に相槌を打ちながらも、オーナー企業の社長だからある程度は止むを得ないだろうということを話しました。すると彼女は、驚くべき事を話し始めたのです。

「私が以前いた会社は新興市場上場の企業でしたが、2代目社長の経費流用による私物化が原因で民事再生となり会社が人手に渡りました。正しくは、社員が社長の経費的な私物化を知って、『社長がやっているなら自分もいいだろう』と架空経費請求やバックマージン方式での売上詐取などが横行しておかしくなったのです。当社社長も2代目。出張経費だけでなく、社用車ベンツの私物化や社有ゴルフ会員権の購入なども一部社員はおかしく思っています。まるで先代が残したお財布からお小遣いを抜き取る子供のように思えます。どこかで歯止めをかけないと、前の会社と同じ道をたどる気がしてなりません」

   Hさんが最初に社員の交通費差額受領の件を「業務上横領」などという言葉を使ってきつく言ったのには、こんな経験的理由があったのです。独立間もない私のオーナー企業経営者による組織私物化の是非判断に、大きな影響を与えられました。

   オーナー企業であることをメリットとできるかデメリットになるかは、オーナーの「良い私物化」「悪い私物化」に尽きるというのが今の私の持論です。特に後継の2代目以降は要注意。社長が社員に後ろめたさを感じてコソコソするような経費等の私物化は「悪い私物化」であり、これを改めないと企業は確実に衰退するとその後いつくもの実例を見て実感しています。

   I社では結局、Hさんの進言を再度伝えるも社長がこれを拒否。私も規定策定後、手を引きました。Hさんは程なく転職し、I社はその後ジリ貧が続き苦境に陥っていると聞いています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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