カンボジアで経済について語る人の中に、(日本人、カンボジア人問わず)「カンボジアは『農業のあるシンガポールを目指している』という人が多いです。
しかし、実際にカンボジアでビジネスをしていると、その道が果てしなく遠いということも実感としてわかります。
なぜなら、カンボジアの政府関係者、国家公務員に、シンガポールの最大のよいところ「きちんと法律を守る」という概念がない、と感じることが多々あるからです。
そして、先日、その究極ともいえる事件がおこりました。
ボクシング賭博をめぐる仰天発言
「『パッキャオ金返せ』6億円訴訟さらに拡大へ」(東京スポーツ、2015年5月8日配信)。
この記事のメインはラスベガスでの、ボクシング「メイウェザーvsパッキャオ戦」に関する賭博なのですが、おまけでカンボジアの話がでています。その話の内容が、概略、
「カンボジアのフン・セン首相が政府関係者とこの試合の勝敗に関して5000ドル(約60万円)を賭けていたのだが、判定に納得がいかず『金は払わん』と公言している」というものなのです。
まず、カンボジアでは国から公認されたカジノ以外での賭け事は違法です。それを、首相自らが犯しているのを平気で公言しています。
さらに、どういうルールだったのかは知りませんが、「判定に不服」という理由だけで、当事者間で取り決めたルールも反故にするということを公言しているわけです。
つまり、政府のトップに立つ首相自ら、国の法律も、当事者間の取り決めも無視すると公言してしまうような国なわけです。
日本の首相がこんなことをしたら、大炎上し即刻退任になると思うのですが、カンボジアではこれが認められてしまってもおかしくない・・・と思ってしまうことが多々あります。
普通の道が、いきなり一方通行に
例えば、警察官。
複数のカンボジア人、日本人の人たちから聞いた話によると、カンボジアでは数万ドル(数百万円)を支払うと警察官になることができる、ともっぱらの噂です。まず、そのお金がどこに行くのかというのが大問題。そして、公務員の給料はものすごく安いのですが、それでも数百万円払って警察官になるメリットがあるというのも問題です。
プノンペンの街を歩いていると、あちこちで警察が検問をしています。そして、バイクや自動車の運転手から罰金をとっています。交通違反をした人から罰金をとるのは問題ないのですが、昨日まで普通の道だったところがいきなり一方通行になり、そこで検問をするなどといった凶悪なことも日常茶飯事です。
さらに、カンボジアでは日本でとった国際免許証で運転ができるのですが、警察官はそのようなルールを知りません(知らないふりかも?)。なので、日本の国際免許を持って検問に引っかかると、問答無用で罰金をとられます。
こうやって、理不尽なルールや、ルール無視の罰金がきちんと国庫に納められるとはとても思いません。こうやって何年も働いて(検問して)いると元もとれてしまうのかもしれません。
国のトップである首相から、末端で法律違反を取り締まる警察官までこんな状況なのがカンボジア。勿論、すべての政治家・警察官がそうだというわけではないのでしょうが、「農業のあるシンガポール」への道は遠そうです。(森山たつを)