ポイ捨てしたゴミからあなたを特定します――。そんな「まさか」と思われるような、少し不気味なキャンペーンが香港で実施された。
環境保護の活動を行う非営利組織と、香港で出版されているエコ系雑誌が、市民の街の美化意識を啓蒙するために共同で行ったものである。
DNA情報から見た目を推測
香港ではゴミのポイ捨てがちょっとした社会問題になっているという。2015年4月22日に公開されたキャンペーン動画を見るかぎり、たしかに街中にゴミが散乱している。
まず係員が、道路などに放置されたゴミを採集。タバコの吸いがらやカフェでテイクアウトしたと思われるコーヒーカップ、そして使用済みのコンドームまで。
採集したゴミをプラスチックのケースに入れ、フタをし、密閉。それを研究室のような場所に持ち込み、「Snapshot DNA Phenotyping Service」というツールで分析する。
このツールを使えば、皮膚や体液など採集したDNA情報から、その匿名の人物の見た目をおおよそ推測し、3Dのデータとして再現することができるという。見た目には、目、髪、肌の色、しみやそばかす、顔の輪郭などが含まれる。
これだけでも十分不気味だが、このキャンペーンでは、再現された人物の顔の3Dデータを、街中にポスターとして掲出した。
もちろん生成された顔のデータは本人そのものではないが、特徴をかなり捉えたものである可能性がある。もしもそれが自分や友人に似ていたとしたら、ドキッとさせられるだろう。
動画を見たユーザーの反応は、「すごいアイデアだ」と賞賛するものもある一方で、「これはやり過ぎ。市民を怖がらせるだけだ。ポイ捨て防止には必ずしもつながらないのでは」といった批判するものも。
一番批判されるべきはポイ捨てをした本人なのかもしれない。一方で、市民のDNA情報がビッグデータに組み込まれ、このような過激な形で利用される可能性があるということを思い知らされる企画だった。(岡徳之)