先日、ワーキングホリデーで来日している韓国人の尹(ユン)さん(仮名、30歳)と会いました。彼女は、韓国の有名大を卒業し、官公庁関連の企業で働いていました。ところが、20代後半を迎え、「自分のキャリアは、本当にこれでいいのだろうか」と考え、一念発起して退職、日本へやって来たのです。
今回は、そんなユンさんの考える「韓国人女性のキャリア」について尋ねてみました。
かなりギスギスした雰囲気も
大学で日本文化を学び、日本語が堪能なユンさん。退職前は、いわゆる「バリキャリ」で、男性と肩を並べて、毎晩遅くまで働いていたそうです。日本ではよく、「韓国の大企業は、入社倍率も高いが、入ってからも大変な競争社会。長時間労働も当たり前」という話を聞きますが、実際はどうだったのでしょうか。
ユンさんいわく、「忙しすぎて鬱になる人が多かったですね」。朝から晩まで働き、「成果を残さねば」という焦燥感にかられる日々。男性の場合は、遅くとも40代までには、出世できるかどうかが決まるので、ユンさんのいた企業では、かなりギスギスした雰囲気もあったようです。そんな彼女がいた部署で、ある時、「自殺者」が出てしまいました。過労によるものか、仕事上の悩みによるものか、ユンさんは多くを語りませんでしたが、彼女は同僚の死に、大きなショックを受けたそうです。
同席していた別の知人は、後に「ユンさんがショックを受けたのは、同僚が突然、自殺してしまったからというのもあるけれど、何より部署内で自殺者が出たにもかかわらず、職場が何のトラブルもなく『日常』に戻っていった点だと思う」と言っていました。利益向上への貢献が求められる中、悩んで苦しんで、自ら死を選んだ社員が出たにもかかわらず、会社は何も変わらなかった。同僚の不幸をきっかけとして、働き方に異を唱える社員もいなかったそうです。そんな会社のあり方に、ユンさんは疑問を持ったのでしょうか。辞表を出したのは、それから3か月後でした。