ブラック上司への対処法
ブラック上司への対処というと、「労基署へ駆け込む」とか「裁判に訴える」などの手段を思い浮かべる人がいるかもしれない。ネット上などでは「胸がスカッとする復讐劇」といった形で採り上げられることもあるが、これらはあくまで最終手段と捉えたほうがよい。ブラック上司に困っているあなたには、それよりもまずやるべきことがある。以下、段階別に解説していこう。
(1)大前提として、あなた自身がキッチリと仕事に打ち込んで成果を出すこと
→→組織で仕事をしている以上、義務を果たさずして権利を主張することはできない。
仮に上司のやり方が理不尽だとしても、被害を訴える人の仕事がいいかげんだと「お前が仕事できないからだろ?」と捉えられても文句は言えないからだ。
まずはやるべきことをやり、仕事で価値を創出しよう。
(2)普段から同僚同士で助け合い、困ったときに味方になってくれる人間を増やしておく
→→あなたは「応援される人」になるべきだ。
そのためには、あなた自身も普段から周囲を応援する存在であればいいだろう。
自分自身の仕事でいっぱいいっぱいな状況かもしれないが、できる範囲から周囲にも目を向けよう。困っているメンバーがいたらサポートし、相談に乗ってあげるなど、「お互いさま」の気持ちで仕事に取り組めば、いざあなたが困ってしまったときも、普段のあなたがやってきたようなサポートを受けられることだろう。
逆に、普段は周囲に無関心で、困ったときだけ助けを求めても、単に「虫のいいヤツ・・・」とさげすまれてしまうかもしれない。
(3)「パワハラの定義」や「労働関連法規」を知っておく
→→何が違法なのかが分かれば、問題意識を持ちやすくなる(本記事最後に、厚生労働省が分かりやすくまとめた資料のリンクがあるのでご参照頂きたい)。健全な組織運営のためにも、問題のあり方は知っておきたい。
(4)「会社目線」「組織目線」で考える
→→ブラック上司に対して、内輪で集まって文句やグチを言い合っているだけでは何も変わらない。上記(2)(3)を実践したうえで、職場の仲間とともに「あのような人がマネジメントにいると、職場としてコンプライアンス的にもよくない」といった「職場環境のための業務改善」という問題意識で扱ってみよう。積極的な提案として、ブラック上司の外堀から埋めていけるはずだ。
(5)とにかく「記録」と「証拠」をとっておく
→→それでも、ブラック上司に対して何らかの復讐をしたい場合はどうすればいいのか。
そのためには、「上司の所業を記録に残す」ことが重要だ。
タイムカードや違法な業務指示のメール、就業規則などはコピーをとっておき、暴言やパワハラ発言はICレコーダーに記録。「○月○日の○時にこんなことがあった」と、1日のスケジュールをメモしておくのもいい。これらは全部法的対処をする際の資料になる。
(6)「労働基準監督署」に告発する
→→いわゆる「労基署に駆けこむ」というやつだ。ただし、労基署はあくまで「労働基準法に則って事業所を取り締まること」が仕事で、労働者のお悩み相談所ではない。賃金未払いなど、確実な証拠が揃っている悪事が優先されるので、その前提で利用したい。本連載の過去記事(2013年5月23日配信)も参照してほしい。
(7)都道府県の労働局に「あっせん」を依頼する
→→労働法の専門家であるあっせん委員が、労使双方から個別に話を聞いてあっせん案を作成し、それを双方が受け入れれば和解が成立するという公的制度である。
(8)「民事調停」や「労働審判」をおこなう
→→いずれも労働紛争解決のための制度で、裁判に訴えるよりも手続きが簡単で迅速、かつ費用も定額というメリットがある。
調停で合意した内容は、確定判決と同等の効力を持つ。また労働審判は、労働問題の専門家である労働審判員が双方の言い分を聴いて審判を行い、基本的に調停、和解による解決を目指すもの。「原則として3回以内で結審」「約2か月半で結果が出る」「結果には強制力がある」という点で、ブラック企業対策の切り札になると注目されている。
(9)「裁判」に訴える
→→最終手段。弁護士費用を合わせると数十万円、そして1年以上の裁判期間がかかる覚悟が必要である。