『人間力』は持ち味によって異なる
『人間力』が低い人は、どうしてこうも社会的に厳しい評価となるのでしょうか。
そこには、人間が社会的に生きていく上で、他の人たちとどのようにコミュニケーションをとり、どう振る舞って生きたらよいのかという、人間として他者と助け合い平和に共存し、協働して暮らしていくための重要な知恵、人間関係の要素、哲学が潜んでいるからなのです。社会でもビジネスでも人間同士の信頼関係が最も重要といわれる所以です。このことは世界共通であり、またサルの社会においても同様なことが見られます。
「コンピテンシー(competency)」という心理学や人材の活用シーンで使われる言葉があります。「高業績者に共通に見られる行動特性」と訳され、企業での人事考課や、採用の基準としても使われています。
『人間力』とは、それらの「高業績を上げる個人の行動特性」である単一の「コンピテンシー」を、いくつか組み合わせたものです。そして優れたリーダー達は、その人ならではの、魅力的な人を惹きつける「コンピテンシー・セット」を形作っているといえます。
単一のコンピテンシーの組み合わせは無限と言っていいほど多様であり、その独自の組み合わせを選択し身につけてきたのは、まさにその人の資質、性格、価値観、考え方、行動、経験が混然一体となった『生き方・人生そのもの』であり、それこそがその優れたリーダーが醸し出す『人間力』として、独特の魅力や共感、信頼感となり、人を惹きつけ感動させるものの正体なのです。
このことは、「コンピテンシー」の面から、企業の構成社員全体を、アセスメントによる測定をした結果、ほぼ全ての組織の階層では、一般社員<主任<課長<部長<事業部長<経営者、の順に、高くなっていることからも確認できます。
特に、「コンセプチュアルスキル」(概念化能力)といわれる「物事の本質を把握する能力」の面では、その差が顕著に表われてきます。
つまり、仕事ができる人、高業績を上げる人、社会で活躍している人は、共通して『人間力』が高いといえるのです。