3年ほど前、中国でながらくビジネスをされてる日本人起業家とお茶したことがあった。この時に、彼がいっていたことで、一番印象に残ったのはこの一言だった。
「中国の優秀なひとは高いよ。総経理レベルだと1500万や2000万くらい出さないとまともな人材がいない。かといって日本人に任せたら、中国でビジネスなんてできない」
とのこと。
日本人CEOの倍の報酬が必要
すでに、中国の経営者のほうが、日本人よりも高い給与をもらっている現実をしってびっくりしたことがある。
こういう話を聞いていたので、先日、日経新聞の「ASEAN人材、安くない」(2015年1月26日)という記事を読んで、そうだよなぁ、と改めておもった。
この記事は、東南アジア諸国でも、経営層の人材は日本人より現地のひとのほうが給与水準が高くなっている逆転現象について書かれたものだ。これは、東南アジア諸国で会社を経営している友人のなかで、話題になった。みんな、薄々感じていたことが記事になり、やっぱりそうだよね、という感想だった。
もう一度記事の要旨をまとめると、例えば、部長級では、日本人よりも、タイや、ベトナム、フィリピンといった国のほうが給与が安い。しかし、役員クラスでは逆転。タイ、ベトナム、フィリピンで現地の役員レベルの人材を雇うには、日本人より報酬を出さないと雇えないという逆転現象がおこっている。さらにCEOクラスになると、差が更に開く。シンガポールでCEOを雇うには、日本人CEOの倍の報酬が必要だ。
日本の企業が東南アジアに進出するとき、最低賃金の低さに目を向けているが、マネジメント層を雇うには、日本以上の出費を覚悟しなくてはいけないと。
外資系企業から母国へ凱旋
たしかに、日本人の会社は、年功序列で、順番に給与が上がり、同期とはたいした額の差がつかない。社長になってもそんなに給与がかわらない。といった平等社会だった。その代わり、落ちこぼれても、雇用だけは守るという、セーフティ社会だった。
ベトナムのエクゼクティブサーチの人の話も聞いたことがある。米国に留学し、MBAなどを持ったベトナム人のキャリアの話だ。彼らは、シンガポールで仕事をして、外資系企業の幹部で仕事をする。そして実績をつくり、こんどは、ベトナム企業にCEOなどとして母国に戻ってくるそうだ。そのときの報酬は、一般のベトナムの水準を遥かに超えている。
アジアの国では、現地の役員やCEOとして雇用される人材は、こういう経路をたどって、鍛えられたスーパー人材だ。高いには理由がある。プロ人材に近い。
良くも悪くも、トップと現場の能力差の小さい日本とはまた違った構図がある。(大石哲之)