期待値不明では「言われたことしかしなくなる」
そんな経験を踏まえて、私はDさんにアドバイスしました。
「組織の中では、自分への過信や自信から、都合のいいように勝手な期待値を描いてはダメです。転職直後でまだまだコミュニケーション不足もあるでしょう。社長の期待値がどこにあるのか、もう一度よく話し合ってみれば解決すると思いますよ」
ところで世間的には、指示待ち部下ばかりが増えて「うちは人が育たない」とトップが嘆くケースが多いのですが、実はこれもまた期待値のズレが原因なのです。正確にはズレというより、期待値不明。トップが期待値を示さずに、いちいち細々(こまごま)とした業務指示ばかり出すがために、部下が言われたことしかしなくなるというパターンです。
「僕も頼りになる右腕が欲しいよ」。社長方からは時折、愚痴とも取れるこんな相談を耳にしますが、そんな折に私は「それは社長さん次第ですよ」と答えることにしています。経営者と部下の間における期待値のキャッチボールで、部下は大きく変わるのです。はじめに球を持っているのは、あくまで社長であることをお忘れなく。(大関暁夫)