「右腕」が育たないと嘆く経営者 それはトップ自身のせいですよ

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立場の変化による「期待値のズレ」

   しかし、この時の私のプランは若干形を変えて、その3年ほど後に実行に移されました。その理由は何なのか。社長がプランの必要性や重要性を理解し、納得したからに他なりません。当初から一緒に計画を進め、このプラン最大の理解者であったH専務の地道な説得、努力が実を結んだ結果だと私は思いました。

   私は気が付きました。独立したばかりの私は、新規事業の具現化という形ある実績を焦っていたのです。そしてその結果、立場の変化による「期待値のズレ」に気がついていなかったと。私は社長に、「経営者が重要な話に耳を傾け理解しようとするのは当然であり、それをさせるのは私に課された期待値ではない」という外部アドバイザー的な姿勢でプラン提示しました。しかし、社長は私に「自分を理解させ、納得させるアイデアの出し方をして欲しい」という自社の内部スタッフとしての期待値を持っていたのでしょう。

   私自身が自分の立ち位置を正しく理解ができていないが故の、期待値のすれ違いであったと、今はハッキリと言うことができます。これは、私の後を受けたH専務が根気強く理解を求め、プラン実現にこぎつけたことからも明らかです。

   私がこれまで見てきた企業経営における名参謀役は、皆トップからの期待値を正しく理解しつつも決してイエスマンに陥っているわけではない、絶妙な立ち位置を確立していました。理想形は、トップがしっかりと自分の期待値を伝え、参謀役はそれを理解して持てる力を存分に発揮する、そんな関係と言っていいでしょう。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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