私が予備校の代々木ゼミナールに通っていたときのことです。
古文でKという名物講師がいました。
この方の口癖は、
「××を覚えなかったら願書を買うな」
でした。
覚えられなければ、願書を買っても合格は無理だから、という意味です。
そこで私も就活講演などで、
「××ができなかったら、リクルートスーツを買うな」
と話すようにしているのですが、この16卒採用においては、
「すみません、まだリクルートスーツも買いに行っていないのですが」
と言われることも。
いや、あの、そういう意味じゃなく...。
これくらい、就活出遅れ組が今年は特に目立ちます。
そこで、今回のテーマは「就活出遅れ組」です。
出遅れ組の特徴は
まずは、出遅れ組の特徴を見ていきます。
1:まだアルバイトを続けようとする
学費・生活費のねん出で大変な学生が多いのは分かりますが、就活先行組は、就活に専念するため、すでにやめているか、せいぜい週1回ペースにまで落としています。
その点、出遅れ組は、就活前と同じく、週2回以上のペースを落とそうとしません。
2:自分の好きな業界・企業の説明会だけに行こうとする
出遅れている、という裏返しなのでしょうけど、志望業界・企業を最初から絞っていればうまく行く、と思い込んでいます。
確かに、先行組はすでに絞り込みを始めている時期ですが、出遅れ組はまだ早すぎます。
3:予約で満席ならすぐあきらめる
先行組でもそこそこいますが、出遅れ組は該当する学生がさらに増えてしまいます。
4:説明会に参加しても参加するだけ
会社説明会に参加しても、単に聞いているだけです。
先行組は、メモを取る、質問をする、聞き足りなければ終了後にも質問をする、など、自ら行動していきます。
出遅れ組はこうした行動ができず、ひどい学生だと居眠りしだすことも。
5:先行組・難関大生にやたらとジェラシー
その結果、やたらとSNSでのやりとりが極端に増えます。
つぶやいたり、既読速レスにこだわったりするなら、就活のことをちゃんとやれと思いますが、そうではありません。
締め切り間際になると、現実逃避から将棋FLASHと面白動画検索にはまる、どこぞのライターのごとく、きわめてよろしくない兆候です。
6:キャリアセンターに行かない
「今頃、就活を始める?遅すぎない?」
と、怒られることを敬遠してか、キャリアセンター・就職課に相談に行かない。これも、出遅れ組の特徴です。
先行組は、ガイダンスなどに出席したうえで、適宜相談もしていますし、求人情報などを取れることも理解しています。
キャリアセンター・就職課に行かないと、出遅れはいつまでも取り戻せないのですが、出遅れ組はそれを理解していません。
7:適性検査対策がいい加減
適性検査のうち、能力検査、特に文系学生は非言語分野(数学)をきちんと勉強していないと得点できません。
出遅れを取り戻すためには、勉強しておく必要があるのですが、目先の対策などに追われて、着手しません。
適性検査対策については、14回記事「『勝敗を分ける』就活本の選び方 SPI編『その対策では空回り』」(2014年12月15日配信)をどうぞ。
出遅れ組でも理屈ある話なら取り戻せる?
出遅れ組のパターンとしては、以下のものが考えられます。
1:長期間の留学
2:資格・公務員試験からの転換
3:体育会系部活
4:それ以外
このうち、1~3は、実はそれほどハンデではありません。
1「長期間の留学」だと、就活時期変更以前から、企業からはかなりモテていました。難関大の国際系学部などでは、長期留学をした学生限定の学内説明会兼選考会を実施しています。
そうした機会のない大学・学部であっても、長期留学の経験を話せば、就活の出遅れはそれほど気にされることはありません。
2「資格・公務員試験からの転換」も、勉強してきたことを話せればそれで十分です。似たところでは、大学の勉強・ゼミ論文などに忙しかった、というものもあります。
3「体育会系部活」も同じ。体育会系部活の話をしていればそれで十分です。
何もない出遅れ組がさらに自滅するパターンとは
問題は4「それ以外」です。
就活後ろ倒しの話を真に受けてのんびりしすぎた、もっと言えば、勉強していたわけでもなく、遊んでいた学生、これは実に危険です。
そして、さらにドツボにはまるのが、1~3を無理にアピールする、あるいは、サークル活動などを盛って話す学生です。
「盛る」ことがいかに無意味かは、19回記事「就活殺人事件のナゾを解け 『相棒』刑事が追い詰める『自己PR』のワナ」(2015年1月9日配信)をどうぞ。
そちらでも書きましたが、経験のない(あるいは薄い)話を無理にしたところで、ウソがウソであることはすぐにわかってしまいます。
そもそも、出遅れ組は、準備不足が採用担当者の目には明らかです。無理に盛ろうとしたところで、すぐバレますし、さらに自滅していくだけです。
出遅れ組が先行組に追いつくには?
それでは、出遅れ組学生が就活を進めるうえでどうすればいいのでしょうか。
1:出遅れを素直に認める
出遅れたことは素直に認めましょう。
下手に取り繕おうとしても、ムダです。
出遅れたことを素直に認めたうえで、できることは何か、考えてみてください。
2:好きな業界・企業志望優先か、ひとまず内定か、どっち?
好きな業界・企業志望にこだわった場合、残酷なようですが、先行組に追いつくのはなかなか厳しいものがあります。
そもそも、選考をすでに終えている、あるいは、エントリーを締め切っている企業も4月以降、日々増加している段階にあります。
それでも、なお、好きな業界・企業にこだわるようであれば、就職留年も視野に入れなければなりません。
もし、好きな業界・企業にこだわらないのであれば、まだ挽回するチャンスはあります。
就職留年をしてでも志望業界・企業にこだわるのか、それとも、どこでもいいのでひとまず内定を取るのか、整理が必要です。
3:アルバイトをやめる
続けるにしても、週1回・3時間程度がいいところでしょう。それか、すっぱりやめて就活に専念すべきです。
4:キャリアセンターに行く
怒られたらどうしよう、なんて、言っている場合ではありません。遅れを取り戻すためにも、早く行ってください。
5:適性検査対策に着手する
特にそこの私立文系学生。数学が苦手、などと言っている場合ではありません。対策をしないと、門前払いに引っかかるだけです。
6:手あたり次第、会社説明会に出る
他の論客の同様の記事で、「インターンシップ参加を」とありましたが、4年生4~5月の段階でインターンシップ実施企業はベンチャー企業を除けば数えるほどしかありません。
それよりも、会社説明会の方が圧倒的に多く、志望業界・企業かどうかに関係なく、参加していくことをお勧めします。
7:大学の勉強を整理して話せるようにする
大学でどれだけ勉強したか、気にする企業が増えています。
特に、「出遅れパターン4:それ以外」の学生は要チェック。
出遅れたことを認めたうえで、それでも大学の勉強をちゃんと話せれば、見直される可能性が出てきます。
8月の選考解禁まであと3か月。まだまだ紆余曲折がありそうです。出遅れ組も腐らず頑張ってください。(石渡嶺司)