「社長冥利に尽きる」 そう言わしめた部長の一言

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「悔いのないよう、あまり仕事に縛りつけない方がいいのではないか」

   すると社長はしばらく黙って考えてから、こう言いました。

「相手がN部長でもそれはダメだ。数字の管理は私がO部長に任せた仕事。仕事が遅いのは、任せた私の責任でもある。まじめで忠実で、信頼に足る仕事をしてくれる彼の姿勢には僕は感謝もしているから、裏切ることはできない。いつも文句ばかりたくさん言ってしまっているけど、その点は本当にありがたいことだと思っているのです」

   私はこの話を聞いた時に、社長はO部長にただならぬ信頼感を持って接しているのだということを初めて知ったのです。信頼感があるからこそ、厳しい言い方もできるのだと。しかし、O部長自身にそのことがどこまで伝わっているのかは、疑問に思っていました。

   1年ほど前の事です。ガンの発病以来、O部長の病状を気にとめては定期的に病状や治療の様子を聞いていた社長。友人の医師にその内容を告げると、「もしかするとO部長の限界は近いかもしれない。悔いのないよう、あまり仕事に縛りつけない方がいいのではないか」とアドバイスされたのです。

   悩んだ末に、O部長を自分の部屋に呼んでこう告げました。

「部長が早く病に打ち勝って元気になってくれることを祈っているけど、今はやりたいことがあるなら遠慮しないでやったほうが体にもいいのじゃないかと思っている。元気になったらまた会社に戻ればいいのだから、もしやりたいことや行きたい場所等があるのなら、仕事のことは気にしないで遠慮なく言ってくれ」
大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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