今回のテーマは「時事ニュースを就活に活かそう」です。
よく、
「日本経済新聞を読めば就活に有利」
「どの新聞でもいいので、新聞を読めば就活で役立つ」
などと言われます。
一方、IT業界関係者やその出身の論客を中心に、
「新聞は古臭いメディアであり、読まなくても、ネットニュースで十分」
などの意見もよく聞きます。
「日々あふれるニュースをどう読めばいいか、わからない」
新聞購読の是非は他でも書いたのでここではおくとします。
就活生からは、新聞購読が必要なことを認めつつも、
「新聞でもニュースサイトでも、日々あふれるニュースをどう読めばいいか、わからない」
「ニュースってどうすれば就活に役立ちますか?」
などの疑問をよく聞きます。
そこで、今回は1~3月(第4四半期)のニュースから数本を選びました。そのニュースがなぜ、注目されているのか、また、就活ではどう活かせばいいのか、などをまとめました。
ミスタードーナツ値上げはドーナツだけではない
【ニュースの無理やり20字まとめ】春からドーナツも食品も値上げでわあ大変
【解説】この4月からミスタードーナツは14種類を10円程度値上げすると3月に発表。
ミスタードーナツ以外でも、マヨネーズ、バター、ウイスキー、牛丼など値上げが相次ぎました。
食料品が値上げした理由としては、アベノミクスによる円安、それから、原材料の高騰です。
食品メーカーや飲食チェーンは、原材料の多くを輸入に頼っています。輸入する際に、円高であれば、その分、利益が出ますが、円安だと逆になります。
たとえば、原材料の輸入量が年1000万ドル相当のメーカーがあるとしましょう。
1ドル・100円であれば、日本円で10億円用意することになります。
ところが、1ドル120円だと、日本円で12億円用意しなければなりません。その差、2億円。
これだけの差額を企業の努力だけで埋めるのはなかなかきついものがあります。
さらに、追い打ちをかけているのが原材料の高騰です。
企業努力でどうにもならない、となれば「商品を値上げする」「値上げをせずに分量を減らす(実質的な値上げ)」「サービスの質を落とす」などが考えられます。
まあ、いずれにしても、消費者からすれば、歓迎せざる出来事であり、値上げした分だけ商品を買い控える可能性が出てきます。
新商品を開発し、それがヒットすれば、買い控えられた分を取り戻すことができますが、そうでない企業はその分だけ業績を落とすことになります。
【関連ある企業】食品、流通・小売り、飲食チェーン、輸入関連の商社
【考えるポイント】原材料の高騰と為替変動の分を値上げで吸収するか、それとも分量を減らす・サービスの質を落とすなどで対応するか
東洋ゴム偽装は働き方の考え次第?
【ニュースの無理やり20字まとめ】東洋ゴムが耐震性能を偽装で関係者が大迷惑
【解説】建築物の免震機構に用いられる耐震ゴムで不良品の出荷や性能データの偽装が発覚しました。
日本国内の自治体の庁舎・マンション・病院で使用されており、棟数は、当初判明しただけでも55に及びます。
この偽装事件、背景には納期に対する厳しいプレッシャーがあったとされています。
どんな仕事にも納期(締め切り)がありますし、それを守ることは社会人として求められます。
しかし、この納期について、2つの見方があります。
1つは、何があっても守るべき、という発想。もう1つは、顧客に求められるレベルに達していなければ納期が遅れても仕方ない、という発想です。
理想であるのは、納期を守り、かつ、顧客に求められるレベルに達していることです。
しかし、東洋ゴムの今回のケースはそうではありませんでした。
では、どうすべきだったでしょうか。
その先例が、ボーイングの787機開発です。全日本空輸がローンチカスタマー(大量に発注することで製造・開発を進める際の後ろ盾となる顧客)となったボーイング787は当初、2008年の北京オリンピックでのチャーター便就航を予定していました。
しかし、開発の遅れで結局、就航したのは2011年です。納期を守らないにもほどがありますが、もし、無理に開発を急ぎ、事故を起こしていたらどうだったでしょうか。ボーイング社も全日空もその信頼は地に落ちていたことでしょう。
納期を守るか、納期を守れなくても信頼を守るか。この辺はグループディスカッションのテーマにもなりそうですし、サラリーマンにとっても賛否両論分かれるテーマでしょう。
そう考えれば、このニュースは建築・土木業界だけの話ではなさそうです。
【関連ある企業】建設、土木、不動産。働き方を考えれば、全業界
【考えるポイント】納期を急がなければならなかった背景/納期を守るかどうか
地方銀行の統合・提携
【ニュースの無理やり20字まとめ】地方銀行の統合・広域提携が進む
【解説】金融志望の学生のよくある自己PRが「地域(社会)に貢献したい」です。特に地方銀行・信用金庫だと異様に増えます。
が、大体は落ちていきます。地域貢献を強調されても、地方銀行・信用金庫の仕事はそれだけではないからです。
さらに、拍車をかけているのが、この広域提携です。
これまで地方・地域ごとにあった銀行・信用金庫ですが、人口減少や低金利の影響で単独での生き残りが難しくなりました。
きらやか銀行・仙台銀行、東京都民銀行・八千代銀行、福岡銀行・熊本銀行・親和銀行、肥後銀行・鹿児島銀行、横浜銀行・東日本銀行などが統合・再編に踏み切っています。
さらに2015年4月には、トモニHD(香川銀行・徳島銀行)と、大阪が地盤の大正銀行の経営統合検討のニュースが流れました。
この地方銀行の再編・広域提携はさらに進む見込みであり、地元に就職したつもりが、別の地方に異動になる、というケースも増えていくかもしれません。
【関連ある企業】金融、不動産
【考えるポイント】地元就職にこだわるかどうか/単独での生き残りが難しいときにどのように収益を上げていくか
大塚家具の内紛
【ニュースの無理やり20字まとめ】かぐや姫と頑固親父が大ゲンカして姫が勝利
【解説】ワイドショーも含めて大騒ぎとなった大塚家具の内紛。結果、娘の久美子社長側が勝利しました。
日本の企業は96%が大塚家具と同じく同族経営であり、入社するか、あるいは取引先が同族企業となる可能性は結構高いでしょう。
立場が社員なのか、あるいは取引先、または取引先金融機関だった場合、どのように動けばいいか、今回の内紛は色々と示唆しているのではないでしょうか。
上司が対立した場合、どのように意見をまとめるか、あるいはどちらかに付くか、難しいところですが、社会人であれば、そのような判断を下すときが必ずあります。
それと、金融機関が企業の株を所有しているのは、本来は会社提案議案に賛成するためです。
今回の大塚家具騒動では、社長と創業者の提案が真っ向から対立しました。これも、どちらに付くか、難しいところです。
融資残高がある場合は、金融機関幹部が仲裁に入ることもあります。今回の大塚家具は無借金経営で介入の余地がなかったことが不幸でしたが......。
このニュースも対立意見のまとめ方など働き方に関わるものですし、金融機関であれば仲裁をどうするか、という問題も含んでいます。
【関連ある企業】金融、同族経営の企業、それ以外の企業全部
【考えるポイント】対立する意見をどうまとめるかどうか/どのように仲裁するか
こうした視点から、時事ニュースを就活に活かしてみてください。(石渡嶺司)