日本生産性本部が「消せるボールペン型」と命名した2015年度の新入社員らが、職場に入ってきた。ネーミングの理由のひとつは、不用意に熱を入れる(熱血指導する)と色(個性)が消えてしまうから、なのだそうだ。そう聞くと、新入社員を叱る際にも勇気がいりそうだが、実際、最近は部下を「叱れない」上司が増えているとの指摘が出ている。
雑誌やニュースサイトの特集でも、「『叱れない人』は管理職になるな!」とか、「部下を上手に叱るコツ」などの見出しをよく見かける。それだけ、部下を「叱れない」管理職層が増えているのかもしれない。ツイッターなどにも、叱って育てる必要性は感じながらも「叱れない」上司や先輩らの悩みが寄せられている。
「すぐに辞めてしまうから怖い」
「部下を叱れない上司」らに注目して、著書『叱られる力 聞く力2』(文春新書、2014年6月)をまとめたのは、作家でエッセイストの阿川佐和子さんだ。トレンド情報サイト「ORICON STYLE」が2014年12月に発表した「年間『本』ランキング」の「タレント本」分野で3位に入るなど、注目を集めた。阿川さん流の「叱る覚悟」などを披露している。
また先日は、「週刊ダイヤモンド」(2015年3月28日号)が「叱れない上司 叱られたい部下」を特集した。上司と部下それぞれ300人ずつ、合計600人にアンケートを実施。その結果、35歳以下の若手社員のうち、34%と3人に1人が、「叱られたことがない」と回答した。一方、「上司が叱り上手」と感じている部下は、わずか4割程度だった。6割近くの上司は、「叱り下手」だと思われていることになる。
部下や後輩をもつ人にとっては、ちょっとヒヤッとする結果かもしれない。特集では、上司たちに、部下を叱れない「理由」も尋ねている。「人間関係を壊したくない」「職場の雰囲気を悪くしたくない」「すぐに辞めてしまうから怖い」といった声のほか、「自分のせいで辞めたとなると、昇進にも影響してくる」という意見もあったそうだ。
「仲良しクラブは御免だ。教えてやれよ、叱ってやれよ」
ツイッターを見ると、「部下や後輩を叱れない」と嘆く人は、結構いる。「あー、ふつーに後輩とか叱れない(笑)」とか、「私叱れないんだよね。治さないと後輩が育たんしな・・・自分のメンツ守る方に尽力してる・・・」など、悩む人も多いようだ。
一方、こんな風潮に怒りを露わにする人もいた。
「組織をダメにする上司部下の関係を毎日見て、呆れる。嫌われたくないから叱れない上司と、それに甘んじる部下。仲良しクラブは御免だ。教えてやれよ、叱ってやれよ。バカ上司!」
こうした指摘を踏まえ、叱るべきか、叱って若手社員が退社といった事態は避けるべきか――「消せるボールペン」のように、その結果を簡単には消せないだけに、なかなか難しい判断が求められそうだ。(KH)