新入社員を「お客様扱い」 そんな腰の引けた指導はやめましょう

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   4月は新入社員が入ってくるシーズンです。

   公益財団法人日本生産性本部では新入社員意識調査・特徴とタイプを毎年3月に発表しています。今年(2015年)は「消せるボールペン型」になっています。

   以前もこのことに触れましたが毎年「〇〇型」と名付けて意味をひもづけているのは、個人的に何の意味があるのか疑問です。言われる方は偏見のレッテルを貼られるようなものです。

「消せるボールペン型」とは?

多少のことではへこたれない
多少のことではへこたれない

   「消せるボールペン型」が意味するところは、

「見かけはありきたりなボールペンだが、その機能は大きく異なっている。見かけだけで判断して、書き直しができる機能(変化に対応できる柔軟性)を活用しなければもったいない。ただ注意も必要。不用意に熱を入れる(熱血指導する)と、色(個性)が消えてしまったり、使い勝手の良さから酷使しすぎると、インクが切れてしまったりする(離職してしまう)」

だそうです。

   要は見かけで判断しない、激務させないということですが、これはある意味、時代を反映しているなと感じました。さらに他の説明では、厳しく指導したり激務を課したりするとブラック企業と誤解され、離職の危険性があると述べられていました。

   こういうことを発信するから、変な誤解が生まれて何かあると些細なことでもブラック企業だ、と言われるようになるのではないかと思います。

   私が以前、若手社員研修を行った際にこんなシーンがありました。

   「会社で改善すべき点や問題点はあるか?」ということを参加者に投げかけてみました。

   すると一人が

「給料が入社時に提示された金額と違う」
「残業が多すぎる」

ということを発言したら、他の参加者も同じようなことを言いだしました。

   「うちの会社ブラック企業だよね?」と、会社の不満のオンパレードで他責の発言ばかりでした。ひと通り話を聞いたうえで「自分達がやるべきことをしっかりやっているのか?」ということを投げかけると、部屋が静まり返ってしまいました。

   社員から出た概要を経営者に報告したら、若手社員は自分のことは棚に上げて認識の相違や被害者意識があることが分かりました。

   挨拶をする、時間を守る、協力する、嘘をつかない、自分で考えて行動する、困難から逃げない

   挨拶をする、時間を守るといった基本的なことは、本来は家庭や学校でしっかりと教えることだと思いますが、できていない人が多いため、会社が肩代わりしてこういうことまで教育しなければならないような状況になっていることは否めないと思います。

一人前に育てるには試練と厳しさが必要

   4月は、新入社員の教育期間になっている会社は多いと思います。

   この時期は仕事をする上で必要な心構え、行動をしっかりと植え付けることが大事です。

   ただ教えてもなかなか定着しないので、日常の業務の中で繰り返し同じことを言い続けて育てていって欲しいものです。

「またその話ですか、勘弁して下さい」

と言われるくらいになったら、頭に入ってきた証拠だと思います。

   今求められているのは、多少のことではへこたれない雑草のような強い社員です。

   たくましい雑草は誰かに肥料を与えられるわけでもなく、強風等の試練に耐えて育っていきます。何もかもお膳立てをして、まるで新入社員をお客様のように扱っている会社もありましたが、そんなことはやめた方が良いと思います。

   単なるいじめとしか見えないような指導はいけないと思いますが、社会に出たら理不尽なことはけっこうあります。

   自分が悪くなくても謝らなければならないことはあるし、社内では上司や先輩から、社外ではお客様から、無茶な要求をされることも出てくると思います。

   そのような理不尽な経験を経て一人前となっていくのではないでしょうか。

   厳しく指導するとパワハラだのブラック企業だの言われるからということで気を遣いすぎている風潮があります。時代錯誤と捉えられるかもしれませんが、一人前に育てるには試練と厳しさが必要だと思います。(野崎大輔)

野崎大輔(のざき・だいすけ)

大学卒業後に無職、離職を繰り返し社労士として独立し、企業の労使トラブルの解決に奔走する。2013 年7 月に自律型人材育成専門コンサルティングを行うデストロイ・ジャパン株式会社の創業メンバーに加わり、専務取締役に就任。社員が自発的に行動する組織作りに注力している。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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