次世代経営者の反抗期
F氏は頭をハンマーで叩かれたような思いだったと言います。「親を親として敬うことすらできない人間に、ビジネス界で生きていく資格はない」と言われたかのようであったと。F氏は理論一辺倒の急激な変革を思い直して、父に敬意を払いつつ時間をかけながら旧来路線の上に徐々に自分のビジネススタイルを築くことに。気がつけば父の時代よりも数倍の会社規模に成長させることができたのでした。
「その四半世紀後に、今度は息子から同じ仕打ちを受けるわけです。親父はマーケティング音痴の過去の遺物だ、ポンコツだとね(笑)。経験で勝てない分を理論で打ち負かそうとするうちに、義を忘れてしまう。年老いた父からバトンを受ける次世代経営者の反抗期です。子は、親相手だからこそ遠慮なしにやり過ぎてしまう。父は親として感情的にならずにこの反抗期を受け止め、分かるまで義を教え続けるしかないのです。2代目がダメにする、3代目が会社をつぶすと言うのは、この義を失うからに他なりません」
紆余曲折を経て義を受け継いだ3代目は、順調に業績を伸ばしています。会社を先代から引き継ぐ、あるいは次代に経営のバトンを渡す、双方の立場での経験を踏まえたF氏のお話に、大塚家具はじめ我が国オーナー企業の事業承継のお悩み解決を示唆する策を見た気がしました。(大関暁夫)