内定辞退したら「予定していた研修の費用」要求された 支払わないとダメですか?

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信義則に反しているかどうか

   しかし、会社としては、面接に来た就職希望者が他の会社にも就職活動しているということは、百も承知でしょう。また、内定者が内定受諾書を書いたにもかかわらず辞退することがあるのも、経験上よく知っているところだと思います。そして、それは中途採用の場合も同じことです。また、相談者は、B社からの内定をもらった後、すぐにA社に内定の辞退を申し出ており、その時点ではまだ入社までにひと月ほどの期間的猶予がA社側にあったこと等から考えると、相談者の内定辞退が直ちに信義に反し法的責任を負わされるほどの違法性があるとは言えないでしょう。よって、今回のケースでは、2万円の研修費用を支払う必要はないでしょう。

   もっとも、今回の場合と違い、相談者の方がA社に研修費用が発生することを知りながら、B社からの内定をもらった後、合理的な理由もなくA社へ内定辞退を申し出ず、入社直前に辞退したなどであれば、不誠実性は強くなります。その場合には話が変わってきてしまうので、注意してください。

   今回の場合も含めて、基本的には内定辞退の場合は損害賠償の話にはなりませんが、内定者の不誠実性が強すぎると責任を負う可能性もあるので、内定辞退の場合は、誠実な対応を心掛けるようにしましょう。

   

   ポイントを2点にまとめると、

1:労働者には解約の自由があり(民法627条)、通常の会社員が退職願の提出によって会社を自由に辞めることができるように内定も自由に辞退でき、そのことについて責任を負わないというのが原則になる。

2:基本的には内定辞退の場合は損害賠償の話にはならないが、内定者の不誠実性が強すぎると責任を負う可能性もあるため、内定辞退の場合は、誠実な対応を心掛けたほうがいい。

   

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岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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