弁護士解説 内定段階でも「労働契約」解約の自由はあるが・・・
内定の取り消しという問題は、テレビや新聞のニュースでもよく見聞きしますよね。一方で内定の辞退を申し出たら、土下座を要求された、いきなり飲んでいたコーヒーをぶっかけられたなどの話を耳にすることもあります。では、内定の辞退に伴う内定者の法的責任とは実際にどうなのでしょうか。
まず、内定とは、採用内定通知書等に記載された取消事由(たとえば入社日までに前職を退職できない特別な理由など)が発生した場合、企業により労働契約を解約できる権利が認められた『労働契約』を意味します。つまり、法律上「内定」は労働契約の締結であるというのが、裁判所の考え方です。したがって、内定を辞退することは辞職、つまり労働契約の解約となります。
そして、労働者には解約の自由があり(民法627条)、通常の会社員が退職願の提出によって会社を自由に辞めることができるように内定も自由に辞退でき、そのことについて責任を負わないというのが原則です。
ただし、内定の辞退が信義に反し、不誠実である場合は例外です。その場合、企業側に損害が生じていれば法的には企業が損害賠償を請求することは可能になってしまいます。
信義に反するかどうかは様々な事情を考慮することになります。今回は、内定受諾書を書いていることや、内定受諾後ひと月もたっている事などの事情を考えると、内定辞退は相談者の方の不誠実性に結びつく側面があるとは言えそうです。