筆者の周りには、昼夜を問わず働いている女子が、沢山います。官僚や弁護士、新聞記者、大企業の営業職・・・彼女たちの中には、誰もが振り返るほどの美人もいます。今回は、そうした女性たちが「一生懸命働くこと」自体が、非常に「現代的で面白い現象である」というお話です。
本格的に「働く若い女性」が当たり前に
「菜々子のように若く美しい女が、どうして徹夜で働かなくてはいけないんだろうか。あの時代、菜々子ほどのレベルだったら、どんな贅沢も我儘(わがまま)も許されただろう。金持ちの娘たちほど、平気で男たちに金を遣わせていた」――。今から10年前に出版された、『アッコちゃんの時代』(林真理子著、新潮社)は、バブル期に、多くの「金と地位」をもつ男性たちを虜にした女子大生(通称:アッコ)の物語です。主人公は実在の女性。物語は、その女性が30代後半となって、ある小説家と編集者に、当時の出来事を話す、という体裁で進んでいきます。
30代後半になったアッコちゃんは、インタビューに付き添う25歳の編集者(菜々子)を見て驚きます。「自分たちの時代に、こんなに働く女はいなかった」からです。菜々子は、アイドル系の美人ですが、アッコちゃんと明け方まで飲んだ後、クマを作りながら編集部へ戻り、必死で働いている。その様子が、バブル世代のアッコちゃんには「新鮮」なのです。小説の舞台は10年前ですが、その頃から、本格的に「働く若い女性」が当たり前になってきた、といえるかもしれません。出版社を舞台にした『働きマン』(安野モヨコ、2004年~2008年、休載中)や、バリバリ働く派遣女性を描いたドラマ「ハケンの品格」(2007年、日本テレビ系列)など、「働く女性のリアル」を取り上げた作品も多く生まれました。男女雇用機会均等法の施行(1986年)から約20年が経過した時期にあたります。
バブル時代、「必死に働くことなんて考えられなかった、お金は男性が貢いでくれるものだと思っていた」一部の女性からすれば、「時代は変わったなぁ」という感じでしょうか。今や「働く女性こそ、美しい!」というムードすらあります。一部では、専業主婦になりたい女性が増加傾向とも言われますが、キラキラ働く女子たちが脚光を浴びているのも、確固たる事実です。
「働く自由」と「働かなくていい自由」、幸せなのは・・・
バブル期には、『アッコちゃんの時代』の主人公だけでなく、若い女性の多くが、六本木のクラブで遊び放題、高級ワインを楽しみ、ヨーロッパ旅行でブランドバッグ買い放題だったという話は、よく耳にします。その全ての費用が、男性持ちだったとか。「本当にそんなことがあったのか」と思い、バブル世代の知人女性に聞いてみたところ、「確かに、あの頃は、男性との食事で『割り勘』なんて考えられなかった。帰りは、タクシー代を1~2万円貰うんだけど、そもそもタクシーが全然、捕まらなくて困ったのよね」と、言っていました。その女性は、大企業に入社したものの、「つまらない」と、2年で退職。現在は、主婦兼フラワーアレンジメントの先生として働いています。若くて綺麗な「私」が、何が楽しくて、おじさん社会の歯車にならなければいけないのか。そういう思いも、あったのでしょうか・・・。
『アッコちゃんの時代』を知らない私は、女性が働くのは当たり前だと思っていますし、仕事では、きちんと成果を出したいと思っています。そういう考え方を「不思議だなぁ」と思うほど、バブル期の女性たちは、幸福な時代を過ごしたのでしょうか。働かなくても男性が貢いでくれて、将来には何の不安もなかった時代と、働く自由はあるけれど、将来は何となく不安、このままでいいのかな、と悩む女性も多い、昨今。どちらが「幸せ」か、判断はできません。が、とにかく「『働く自由』があるだけでも、幸せなことかもしれない」とは思うのです。(北条かや)