あの「自虐就活アニメ」企業を直撃 創業100年企業のぶっ飛び自社アピール

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「実はもともと、アニメのファンでした」

   JR・塚本駅を10分ほど歩くと、工場地帯となり、その一角に「タケモト」と書かれた看板が見えてくるので、場所はすぐ分かりました。

   応接室に通されると、しばらくして、三宅社長、佃本部長(人事部長)、それと川咲さん(クリエイティブディレクター)の3人が揃い、さっそく取材開始。まずは、このアニメについて聞いてみました。

三宅「2013年冬に桃屋さんとのコラボアニメを見たのが最初でね。このアニメはおもしろい、これうちでもやってみようか、と。」
佃「私は元々DVDを買うほどのPeepingLifeファンでして。すぐに問合せると、とんとん拍子に話は進みまして、2014年6月には話が決まり、11月から公開を開始しています」
三宅「台本見てもこれは面白いと思いました。いや、銀行や経済団体などの会合に行きますでしょ、すると、結構な頻度でタケモトピアノに間違われるのです」

   なんと、タケモトピアノのネタは社長が大元でした。

   タケモトデンキは、1916年創業の計測機器などを製造するメーカーです。しかし、2012年には福祉機器・ベッドセンサー(要介護者がベッドから離れると介護スタッフに通知がくるセンサー)を開発するなど、従来の機器をずっと作るだけ、というメーカーではありません。

三宅「段々と、『デンキ』が合わないと感じるようになりました。と言って、タケモトだと、同名企業は山ほどあります。そこで、来年の創業100年に合わせて、ハカルプラスに社名を変更することにしました。これなら、同名の企業もないですし、タケモトピアノさんに間違われることもありません」

   社名も斬新な名前に変更となりますが、アニメもそれに合わせて活用を決めたとのこと。

佃「フックを変えることで、これまで集まっていた学生とは感度の違う学生にもリーチしたい、と考えています。創業100年という老舗企業、だけどベンチャースピリットもあるよ、ということをうまく伝えたいと思いました」

   タケモトピアノのネタも強烈ですが、「いつまで中小やっているんだ」など、他のネタも強烈です。

佃「アニメ製作会社さんには、『NGワードはない』『やれるだけやってくれ』と伝えました。うちの方が過激すぎて、先方から『そこまで行くと、アニメの世界観が壊れる』と契約破棄になりそうになりました。何でも、企業コラボでNG無しでやったのはうちが初めてとのことです」

   このアニメはかなり評判を呼び、

川咲「アニメがきっかけで会社訪問に来られた学生もいましたし、合同説明会でも最初からうちのブースに来てくれた学生がいました」

   なお、もともと、合同説明会にはブースを出すことはあっても、閑古鳥が鳴くことはほぼないそうです。

   とはいえ、2015年卒の新入社員は3人。例年、5~10人が目安なのですが、

三宅「10人に内定を出したのに、辞退が相次いでしまいました。数年前までは、インターンシップを実施することでいい学生を採用出来ていたのですが、2014年卒以降、大手企業も含めて実施するようになり、難しくなってしまいました」

   そこで2016年卒の今年から説明会兼選考会として導入を決めたのが、「終わらない計測からの脱出 ナゾトキ体験型説明会」です。

   詳しい内容はさすがに秘密とのことでした。

三宅「弊社は創業100年、だけどベンチャースピリットがある。それに、これからの時代の変化にも対応しなければなりません。変化を楽しめる、そして、頭のいい、愛嬌のある『アホ』。こんな学生に来てほしいです」

   他のポイントは、「失敗を恐れない」「そこそこ気が利く」「考えながら走れる」。

   なるほど。

   説明会は3月28日、4月11日(各2回)、合計4回予定でしたがすぐ満席。4月24日に追加(2回)しましたが、こちらも満席。

川咲「説明会参加者は昨年比8倍です。人手が足りないのでこれ以上の追加日程はさすがに無理です」

   ところで、タケモトピアノさんからは、何か言ってこないのでしょうか。ものすごくネタにしていますが。

佃「いや、もう少ししたら、『探偵!ナイトスクープ』に投稿して、『タケモトデンキ、タケモトピアノに【タケモト】を譲る』というのを放送してもらえないかな、と」

   『探偵!ナイトスクープ』は大阪・朝日放送の関西ローカルの深夜番組(関西以外では時間帯などを変えて放送)の視聴者参加型バラエティ番組で、西田敏行が探偵局長役......とか、説明している場合じゃない。どこまでもノリのいい、そしてしたたかなタケモトデンキでした。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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