残業代めぐる会社VS社員の言い分 「対立」乗り越えた社長の秘策

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子育てから学んだことを活かす

   挙げ句に警察沙汰まで引き起こす事態に至り、社長は大変落ち込みました。この時社長はあることに気がついて、「起きてしまったことは仕方ない。これからは親としてお前を信頼して細かいことは一切言わないから、お前の判断でしっかり生きろ」と息子さんに伝え、対応を改めたのだと言います。自分にとってはいつまでも子供でも、一定の年齢になったら一個の大人として信頼してあげ自覚と責任感を持たせるということの大切さに気がついたのです。この一件を機に息子さんは更生し、家に戻り無事大学まで卒業されたそうです。

「息子の件と同じです。会社の社長と社員は親子みたいなもの。しかも社員は大人ですから、子供扱いして信頼しなかったら、すねておかしな方向に行ってしまうと思うのですよ」

   傍らで我々のやりとりを聞いていた取締役のTさんが、おもむろに話に入ってきました。

「早く今の私にも信頼感を持っていただき、企業経営も任せて欲しいのですけどね」
「お前はまだ経営者としては子供だから、信頼して任せるにはもう少し時間が必要だな」

   Tさんこそ件のご子息。先代と後継ぎが笑ってかわす会話に、社内が信頼感に支えられうまく流れている企業の雰囲気を感じました。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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