残業代めぐる会社VS社員の言い分 「対立」乗り越えた社長の秘策

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約2割も支払残業代が減った

   結果はどうであったか。なんとこのやり方で約2割も支払残業代が減ったと言うのです。この話を聞いた当初私は、これは社長による無言のプレッシャーの成果ではないのかと思いましたが、実際に社員の声を聞いてみると、そうでもなさそうだと分かってきました。

   社員数人から聞いた、このやり方に対する感想の中で特に象徴的だったのは、

「これまで漫然とやり過ごしてきた残業ということの意味を再認識させられましたし、その上で残業を否定しない社長の言葉から、社員を信頼する姿勢が伝わり責任を感じました」

というものです。

   社長にこの話をしてみると、

「社員には社員なりに主観的とはいえ言い分があるわけで、そこをとやかく言ってもラチがあきません。むしろこちらの考えを伝えた上で相手を大人として信頼してあげることで、実のある残業をしようという自覚が呼び起こせるのだと思います。自覚と責任感は、上に立つ者の方から先に相手に対する信頼感を態度で示していかないと決して作り上げることはできない、と私は子育てから学んだのです」

との答えが返ってきました。

   S社長には3人のお子さんがいらっしゃいます。上2人が女の子で、その下に男の子が1人。女の子2人は「可愛い可愛い」で育ててきたものの、3番目の男の子に関しては社長の跡取り育成意識が強く出てしまったのか、小さい頃からあれやこれや一挙手一投足にまでうるさく指導をしたといいます。その結果、大きくなるにつれて反発が強くなり、高校に上がる頃には非行に走り家にもろくに居つかない状況に陥ったのでした。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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