今日のテーマは「学生の質問」です。
会社説明会や面接などで、学生の質問を受け付けることがあります。この学生の質問から見えてくるものは何でしょうか。
人気企業説明会でも質問フリータイムでは「沈黙」
(2015年)3月上旬、九州大の学内合同説明会と日経就職ナビの合同説明会(広島)に、それぞれ1日ずっと参加していました。
なぜか、某企業ブースで、社員のふりをして、資料配布やら交通整理をしていましたが、細かい事情は飛ばすとして。
この合説、どちらも共通点があり、それはタイムスケジュールがきっちり決まっているのと、終盤に質問中心のフリータイムが設けられていたことです(九州大は2回、日経就職ナビは1回)。
私がうろうろしていた某企業は毎回50人近くが参加。椅子は10席程度しかないので、当然ながら残りは立ち見です。この某企業の周辺には、トヨタ自動車、JR西日本や地元金融機関など人気企業のブースがあり、こちらは多い時だと100人以上が参加していました。
一方的に話すだけの説明でこれだけの人数。質問フリータイムとなると、もっと人が増えるのだろう、と思っていました。
ところが、質問フリータイムとなった瞬間、どちらの合説も、学生は潮が引くように帰っていきました。私がいた企業ブースも20人程度。人垣ができていたトヨタ自動車など他の人気企業も10人か20人程度しかいません。
私立大生なども参加する日経就職ナビの合説はまだしも、九州大の学内合説でも同様の動きだったので、ちょっと意外でした。
学生を捕まえて聞いてみると、
「何を質問していいのか、わからない」
「変な質問をして、悪目立ちしたくない」
などの答え。
まあ、志望度の高くない、合説でふらっと入った企業ブースでは、何を聞けばいいかわからない、というのは、まあそうかな、と思います。でも、志望度の高い人気企業ブースでも、何も聞けない、というのはちょっと寂しいような・・・。
「質問」中心の就活イベントで参加学生少数の理由
合説の質問フリータイムで学生が少なくなるのと同じ光景を私は実は毎年、見ていました。それは、私が主催グループの1人として関わっている就活イベントです。東京、関西、岡山で、それぞれ11月から2月にかけて、採用担当者有志と私と学生の交流イベントを開催しています。
名称や運営方法などは省略しますが、イベントのメインとなるのが、学生と社会人の交流会。社会人側は自社の話ではなく、学生からの質問に答えていくのが中心。
このイベント、参加費はゼロないしは実費程度。学生側40~60人程度に対して社会人は10~20人程度。イベントの長さは4時間程度なので、採用担当者からすれば、効率の悪いイベントです。
ところが、岡山と関西については、2016年卒対象で4年目となるのですが、年を重ねるごとに参加企業が増加しています。
というのも、参加学生は、知名度の低い企業に対しても、選考参加の比率が高く、さらにそこから内定者が出る、ということも。一見すると非効率的なイベントですが、実は企業からすれば効率のいいイベントなのです。
特に関西のものは、大学側の認知度も上がり、2016年卒対象は例年の2か所開催(日伝、甲南大)から、さらに3か所(龍谷大大阪オフィス、関西外国語大学研都市キャンパス、京都女子大)で実施するようになりました。
企業からの評判の良さは、選考参加・内定者の輩出だけではありません。
「ちゃんと質問できるし、理解度も高い。何よりも就活へのモチベーションが高い」
こうした感想が出てくるのです。
考えてみれば、普通の学生なら、ちょっと敬遠したくなる「質問」が主体の就活イベントです。そこにわざわざ来るのですから、企業側の評判が悪いわけがありません。
質問は何でもいいからすればいいのか
それでは、学生は、どんな質問をすればいいのでしょうか。これは、説明会・合同説明会か、面接かで異なります。
説明会・合同説明会の場合、企業のことを分かっていない学生が多い、という前提があります。なので、企業そのものについて聞くのもOK。調べればわかる話でも、まあ、問題はありません。
ただ、給料や福利厚生なども微妙。調べればわかることも多いですし、給料などは社員によっても異なる企業も多いので、聞いてもあまり意味がありません。
明らかにアウトとなるのは、「単なる感想・主張」「複数質問」「社員にとって答えづらい話」の3点。
1点目は、何の質問をしているのか、よくわからず、答えづらいというケースがよくあります。
2点目はよほど人数が少ないとか、質問をする学生が他にいないならまだしも何度も、というのは、まずいでしょう。
3点目は、「社長ならどう変えたい?」「学生に戻るとしたら本当にもう一度受け直す?」など。答える社員にとっては、自社批判につながりかねず、説明会などで簡単に答えられるものではありません。
面接での質問も実は選考のうち?
一方、面接など選考中の質問、特に「それでは最後に質問はありますか?」への切り返しは、就職・キャリア関係者によって大きく分かれます。
何でもいいから質問を、とする人と、特になければないでいい、とする人と、二派に分かれます。
前者の「質問をするべき」と主張する人は、それだけ、その企業への関心の高さを表すから、としています。
私は、後者の「特になければないままで十分」にやや近い方です。
質問できるのであれば、質問はした方がいいことは確かですが、何でもいい、と言うわけではありません。
たとえば、最終面接で社長がいる前で、
「ところで給料はいくらでしたか?」
と質問して、社長以下、役員がドン引き。せっかくの高評価がこの質問でひっくり返り、内定が出なかった、という例もあります。
給料以外でも、福利厚生や企業の業務内容など基本情報、自社批判につながりかねない話もアウト。それから、面接でよく出るのが、学生の面接内容に対するフィードバックの要求です。
企業によっては、面接後に、面接内容についてフィードバックをしているところもあります。
ですが、やっていない企業に対して、それを求めたところで、それは学生側の傲慢というものです。
「最後に質問は?」と言いながら、実は結構見ているので、これも選考のうち、と言えなくもありません。
「最後の質問」で何を聞けばいい?
では、何を聞けばいいか。やはり、相手が話しやすく、学生の参考にもなりそうなネタにした方がいいでしょう。
「ビジネス書などでお薦めの本は?」「他の業界で気になる動きやニュースは?」
あたりでしょうか。
これだと、面接担当者によって、答えがかなりばらつきますし、どんな点に関心を持っているのか、面白いと思います。
それか、話し足りないことがあれば、
「質問ではないのですが、今日の面接では私の××をうまくお話しできませんでした。この点、すこし、お時間をいただいてもよろしいでしょうか」
と断ってから、話すのも、いいでしょう。
それか、質問がなければ、安全策として、
「特にありません。本日はありがとうございました」
でも、面接を担当してくれたことに対する感謝の念の表明でも、十分です。
まあ、こういうのは、慣れるしかないので、ちょっと怖いと思っても、会社説明会などにどんどん参加するしかありません。
また、新3年生以下の学生の方は、石渡関連かどうかはともかく、全国各地で社会人と学生の交流イベントがあります。下手なインターンシップなどよりも面白いはずなので、参加するようにしてください。(石渡嶺司)