ついに「人を雇う」! だが、それは試練の始まり・・・
これでは、常連客どころか、新規のお客さんも、満足させられない。そう考えたE子さんは、ハローワークに求人を出すことに。時給は850円でしたが、翌々日には、ある専業主婦(Mさん)から、応募がありました。猫の手も借りたいほど忙しかったE子さんは、Mさんの履歴書を見て、「これまでに、10以上のパート職を転々としてきたようだけど、真面目そうだから」と、採用を決めます。しばらくは、Mさんも一生懸命に、菓子類の仕込みや、カフェでの接客を覚えてくれようとしていました。
ところが、ある日のこと。E子さんが忙しくしている時、「卵が足りなくなったので、ちょっと近くのスーパーで買ってきて頂けませんか」と頼んだところ、Mさんは、「買い出しなんて、募集要項には書いてませんでしたよね? 私は、お菓子作りと接客以外の仕事はしません!」と、怒り出しました。
その頃から、Mさんの態度が、少しずつ変わっていきます。菓子作りの基本作業を任せると、「どうして、仕込みは私なんですか? もう少し、高度な作業もさせて下さい」と言い、接客の仕方を注意すれば、「以前の指示と違います」と反発。
E子さんは、Mさんの反発に、ほとほと疲れ果ててしまい、「どれだけ忙しくても、1人でやっている方がマシ!」と、思うように。ハローワークに相談し、円満に辞めてもらうことにしました。
もちろん、Mさんにも、「募集要項には『菓子作りと接客』とあったのに、買い出しに行かされるなんて!」とか、「私を信頼していないから、基礎的な作業しかさせてもらえないのでは?」などの、不満もあったことでしょう。そうしたすれ違いも含め、2人の相性が合わなかったのは、仕方がありません。
E子さんは言います。「忙しくなったから人を雇う。簡単なことだと思っていたけど、こんなに大変だなんて・・・もう、1人で対応できる分しか作らないし、無理にお客さんを増やそうとは思いません。それで十分なんです」。彼女は今、当初のコンセプトだった『小さなお店』に立ち返ろうと、考えているのです。(北条かや)