アジアのさる島国の村落で会った村長から学んだコト
そんな禅問答のようなやりとりをニコニコと笑みを浮かべながら聞いていたD社長が、助け舟を出してくれました。
「僕はね、ひとつだけずっと心掛けていることがあります。それは、機嫌を職場に持ち込まないということ。僕は本当は気の短い男なのですが、特に上に立つ者が悪い機嫌を職場に持ち込んじゃいかんと思っているのです。これは若かりし頃に出会った、心の師の教えです」
D社長は先代の急逝により思いがけないタイミングで社長になり、当初は何より自分自身が落ち着かない状況下でした。就任から1、2年の間に会社もよりどころを失い、迷走状態に陥ったそうです。どう会社を引っ張っていいものか悩んでいたその時、心配した冒険好きの友達に旅行へ連れ出されました。「全てを忘れて気分転換せよ」というわけです。行先は、アジアのさる島国の村落。そこで偶然出会った村長さんに、リーダーとして心打たれるものがあったのだと。
村長さんは、とにかく穏やかですべての村民から慕われていました。社長は村を離れる際に「村長さんはなぜ、そんなにいつも穏やかなのですか」と質問をすると、「私も人間だから機嫌がいい時も悪い時もある。でも私が少しでも機嫌を損ね、それが態度に出れば皆が私に気を遣う。人の上に立つと言うことは、それだけ注目をされると言うこと。注目をされる人は、余計な負担や迷いを皆に強いてはいけない。それは村にとって最も無駄なことだ」と答えてくれたそうです。