弁護士解説 労働者派遣契約の内容確認を
小さなミスが思わぬ大問題を引き起こすことってありますよね。今回は、一本の電話を適切につながなかったため、会社に損害が生じようとしています。しかも、問題を起こしたのが派遣社員であれば、派遣会社に損害を賠償してもらいたいと思う会社もあるのではないでしょうか。
派遣先が派遣会社に損害賠償請求できるかどうかは、派遣先と派遣会社との労働者派遣契約の内容によるところが大きいです。そして、派遣労働者の違法行為について派遣会社の損害賠償責任が記載されているような場合には、派遣会社が責任を負う可能性があります。
過去の裁判例でも、派遣会社への責任が認められたものがあります。
例えば、派遣会社の社員が派遣先の会社のお金を横領したパソナ事件(東京地判 1996年6月24日)では、派遣会社の責任が認められました。
ただし、派遣先の管理が不十分であったような場合は、過失相殺といって、派遣会社が負う損害賠償責任が少なくなります。
派遣労働者が派遣先で業務上の文書を偽造したテンプロス・ベルシステム24事件(東京地判 2003年10月22日)では、裁判所は派遣会社の責任を認めたものの、派遣先にも相当な不注意があったとして、派遣会社の賠償額は減額されました。
今回のご相談は、コールセンターへ電話をした取引先を、派遣社員が営業部に繋がずに終わらせてしまい、取引先が怒り、取引がなくなりそうとのことです。
派遣社員が派遣業務に関しておこしたミスですので、労働者派遣契約の条項次第で、派遣会社の責任を追及できる可能性があります。派遣会社がいい加減な労務管理をしていれば、なおさら派遣会社の責任が認められやすいでしょう。しかし一方で、派遣先での電話研修がしっかりと行われていないという事実があった場合は、派遣先にも責任が認められて派遣会社の賠償額が減額される可能性も出てきてしまいます。
労働者派遣契約において、派遣会社に請求できる条件・範囲などを明確にしておけば、有事の際に損害賠償を請求しやすくなりますので、一度契約書を確認してみてもいいかもしれませんね。
(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)
ポイントを2点にまとめると、
1:派遣労働者の違法行為について派遣会社の損害賠償責任が記載されているような場合には、派遣会社が責任を負う可能性がある。
2:派遣先の管理が不十分だったなど、派遣先にも責任があると認められた場合は、派遣会社への賠償額が減額される可能性がある。