よく、「女性部下の育て方が分からない」という男性の声を耳にします。「女の涙は武器」という表現がありますが、女性に泣かれると、こちらが悪者になってしまうようで、強く叱れない。男性の部下に対しては、遠慮なく叱責できるのに・・・と、悩んでいる上司も、結構いるようです。
その気持ちは、とてもよく理解できます。が、気にし過ぎて、女性部下を「腫れ物に触るように」扱う男性を見ると、「ちょっと、もったいない」と感じます。なぜなら、仕事で女子が流す「涙」は、『武器』というよりも、むしろ『汗』だからです。
男性上司の3人に1人「女性部下との接し方で失敗」
昨今、メーカーの営業職や建設業、運輸業など、これまで「男性中心」といわれてきた職場にも、若い女性が増えています。しかしながら、日経新聞が昨(2014)年、男女両方の部下を持つ、全国20~50代の男性400人と女性100人に調査したところ、男性の3人に1人(32.5%)が、女性部下との接し方で「失敗したことがある」と回答。「男性上司」との接し方で、失敗したことがある女性は27%と、男性より少なく、男性上司の方が、女性部下との関係性を重く受け止めている可能性もあります。
自由回答では、女性部下を「叱り飛ばして泣かせてしまった(50代・保険業)」という声もありました。女性を泣かせてしまう=「失敗」と考える向きは、多いようです(「男性上司の遠慮に先手」2014年4月19日付、日本経済新聞朝刊)。
女子社員にしてみれば、確かに、男性上司が声を荒らげたり、怒鳴ったりするのは怖いものです。筆者の知人に、K子という、当時新卒2年目の営業女子がいたのですが、週に2回は「上司からミスを徹底的に追及されて、泣いてしまう」と言っていました。ただ、その場でボロボロと涙を流すわけではありません。トイレの個室で、声を殺して泣くのです。
「こんなに頑張っているのに、どうしてあんな小さな失敗で、叱られてしまうんだろう。自分は、もっとできるはずなのに・・・悔しい!」泣き腫らした目を見た、別の先輩が、心配そうな素振りでこちらを気にしているのも、分かっています。が、K子は、そういう「優しい先輩」に、頼ろうとは思っていません。ただただ、悔しいから泣いているだけなのです。誰のためでもない、「自分のために」泣いているのです。
泣いて、気分を切り替える
K子の涙は、男性に優しくしてもらうための「武器」ではない。では、なぜ、そんなに頻繁に泣くのか・・・と、考えていたところ、ある企業の女性部長が言っていたことを思い出しました。
「女子ってとにかく、よく泣くんです。私も沢山、泣いてきましたよ。その涙を怖がって遠慮する男性上司もいるけど、女子にとっての涙って、『汗』みたいなもの。自然に流れてきて、ハンカチで拭いたらまた、元通り。『さ、また頑張ろう!』みたいな(笑)」
そうなのです。彼女たちにとっての涙は「武器」ではなく、「汗」なのです。大量に汗をかくと、悔しい思いが排出されて、気分の切り替えになる作用も期待できます。汗をかいている(=涙を流している)姿を見られるのは、恥ずかしいから、人前で泣かずにトイレにこもる。涙を拭いて、化粧を直したら、気分はスッキリ。平気な顔で、席に戻る。そんな女子社員は、結構多いのです。
もちろん、泣いてばかりいると、仕事になりませんから、「汗をかかなくていい職場」への転職を考えたり、手を抜くことを覚えたりする女子もいるでしょう。とにかく、働く女子の多くが流す「涙」は、上司に対する「武器」=「媚び」ではない、ということは確かなようです。たびたび叱られ、泣いていたK子は、3年目を迎えた年に見事、営業トップとなり、鮮やかに転職していきました。(北条かや)