あなたの周りに「不倫」している男女は、いますか。周囲に聞いてみると、身近にはいなくても、「友達の友達が・・・」とか、「他部署の◯◯さんが・・・」など、不倫という『甘い蜜』(?)を経験している人は、少なくないようです。今回は、そんな職場での「不倫」事情をレポートしてみます。
「好きなら不倫でも仕方ない」と考える人は、10人に1人
博報堂生活総研が、1992年から2年に1度実施している「生活定点調査」によると、「好きなら不倫な関係でもしょうがないと思う」という人の割合は、10.7%です(2014年)。男女や世代別で、それほど大きな差はありません。が、1998年の同調査では、「不倫容認派」が、なんと20.3%(現在のほぼ2倍!)もいたのです。特に20代男女では、約3割(男性33.3%、女性29.3%)と、他の世代より多いのが特徴でした。
当時は、不倫を描いた『失楽園』(渡辺淳一著、1997年)が、社会現象となっていました。出版社勤務の男性と、人妻の『濃密な不倫』を描いた同作品は、ドラマ化、映画化され、大ブームに。不倫への「密かな憧れ」を抱く人が、増えたのかもしれません。しかし、1998年をピークに、「好きなら不倫でも仕方ない」という人は減っていきます。現在では、20代の男女とも9.1%です。
私の周りでも、不倫経験者はいるのですが、Mちゃん(25歳)のエピソードは、ちょっと考えさせられました。中堅企業の大阪支社に勤める、新卒3年目のMちゃんは、単身赴任で支社に来ていた40代の男性と、恋に落ちます。よく、「職場では一緒に過ごす時間が長いから、関係が深まって恋愛感情が生まれやすい」なんていわれますが、Mちゃんもまた、「仕事で一緒になるうちに、既婚者と知りながら、好きになってしまった」そうです。
他人の恋愛にあれこれ言う権利はありませんが、その後、Mちゃんから、相手の男性の「奥さんまでもが不倫を始めたらしい」と聞いたときには、さすがに驚きました。
不倫相手の奥さんまで、不倫を始めた理由は?
Mちゃんと不倫をしていた男性は、1か月に1度のペースで、家族のもとへと帰省しています。が、どうも、奥さんの様子がおかしい。夫の不倫を察してか、よそよそしく、自分への愛情が減っている。男性が、自家用車のカーナビの「履歴」をこっそり、チェックすると・・・地元の「ホテル街」の住所が、幾度も表示されていたのでした。「これは、誰かと定期的にホテルに出かけているに違いない」と悟った男性。でも、自分も不倫をしている後ろめたさから、問い詰めることは、できない。
Mちゃんは、「不倫するような奥さんとは別れて欲しい」と、主張していますが、子供がいるため、安易に離婚はできないそうです。男性は、奥さんの不倫相手がどんな人物か、気になる一方、Mちゃんとの恋愛関係も楽しいので続けたい・・・という、ドロドロした感情で、いっぱいになっているようです。
唯川恵さんの小説『テティスの逆鱗』(2010年)には、中小出版社に勤める30代女性が、仕事と家庭の両立に疲れ、夫とは出産後、性生活もなく、育児は上手く行かず、「こんなに頑張っているのに、誰からも、ねぎらってもらえない」と、不満を募らせる場面があります。そんな折、部下の男性から熱い思いを告白され、彼女は「折り畳んでいた心の一部がほどけ」ていくような、心地よさを味わうのです。両立を頑張っても、夫も周囲も、誰も褒めてくれなかった。でも、この男性は、私を愛してくれて、承認してくれる。
私生活も仕事も、どちらも充実しているなら、人は「不倫」など、しようと思わないのかもしれません。Mちゃんの話を聞いていると、不倫相手の男性や、その奥さんの、底知れない「甘美な罪の意識」が、少し分かる気がします。あ、もちろん私は「不倫、ダメ、絶対。」派ですけど。(北条かや)