「親子間」事業継承はナゼもめるのか 解決の糸口はこんな所にあった

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「温故知新」の精神

   親子経営者は、親子関係であるが故に他人同士とは異なり、なぜか経営者としてのコミュニケーションが不足するのです。先代は見て学べと無言の圧力をかけ、後継は先代を敵視しそれとは違うやり方で自己を顕示したがる。そんなおかしな流れ故に、身内への経営トップの座の承継がなぜか難しくなってしまうケースは間々目にするところです。

   それから3年、K会長は創業50周年を見届けて亡くなりました。葬儀では、喪主を務めたY社長の挨拶に胸を打たれました。

「私は勝手に経営者としての父をライバル視し、病に倒れるまで父に学ぶ姿勢はありませんでした。しかし病床の父とたくさん話をして、事業継続に必要なことは父と子が協力して作り上げる『温故知新』の精神であると理解しました。会長、ありがとうございました」

   「故きを温ねて、新しきを知る」。新旧どちらが欠けても事業承継はうまくないのです。同族企業の事業承継になくてはならないものを実感させられた、見事なご挨拶でした。以来、父子の事業承継前の経営者としての緊密なコミュニケーションこそが、帝王学と言われる後継教育そのものなのだと私は思っています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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