「有休5日義務付け」は不発の予感 「休めない」構造は変わらない

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同一労働同一賃金の基本法を作り、その流れを後押し

   こういう状況下で有休5日取得運動を推進するとどうなるか。多分それくらいならなんとかなるだろう。というのも、彼の仕事の中には無駄な業務がそれなりに含まれているに違いなく、それを5日分見直せば済む話だから。でも、それは問題の本質に切り込むソリューションなのだろうか。


   たぶん有休を5日間無理やり取らせたところで、サラリーマンたちはお盆や年末年始といった「比較的休みの取りやすい空気」のただよう時期に、互いの顔色をうかがいつつ、赤信号みんなで渡れば~式に揃って有休を申請するだけだろう。筆者にはそれが根本的な解決策とはとても思えない。


   もともと日本の祝日が多いのは、休めない、休もうともしない労働者を休ませるため、政府が音頭をとっていろいろな祝日を増やしてきた結果である。要は「休めない」という構造的課題に目をつぶって、お上が法律で休ませてきたわけだ。


   でも、日本人の労働時間は今でも世界トップクラスで過労死はなくならないし、生産性も停滞したまま、人件費の安い新興国と同じ土俵で勝負し続けている企業が少なくない。役所がいくら規制をこねくり回しても、問題の本質は変えられないのだ。


   昨(2014)年のソニーや日立のように、年功給を廃し、業務範囲の明確な職務給に切り替える動きは既に発生しつつある。後は同一労働同一賃金の基本法を作ってその流れを後押ししてやることで、先の1点目はクリアできるだろう。


   合わせて、時間によらない新たな働き方を拡大していくことで、日本人ホワイトカラーの中に、従来よりずっと大きな裁量が生まれることになる。国が有休取得の目標を掲げるのは、それからでも遅くはないだろう。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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