無意識のうちに目を皿にして探し続けている
すると、顧問のHさんが社長を評して言いました。社長は人を探し出すことにとにかく熱心なのだと。自社で欲しいキーマン人材がいると、その人材が見つかるまで意識の底でひと時もそのことが頭から離れなくなり、無意識のうちに目を皿にして探し続けているのだと。
「社長は私との初対面で、私が大手企業に勤務していたことを知るや、なりふりかまわず根掘り葉掘り経歴を聞きはじめて、いきなり『あなたのような方を探していました。頼みます!うちを助けてください』ですから、こちらが驚きましたよ」
Hさんの話に、今まで見えなかったものが見えた気がしました。すなわち、社長の言う神様の正体です。もしかするとそれは、「カラーバス効果」と言われるものかなと。
「カラーバス効果」とは、普段は何気なくやり過ごしてしまうものが、注意して見ていると驚くほど気が付くことが多いと言う現象のこと。例えば、出かける際に「今日は赤い看板が街にどのくらいあるか注意してみよう」と意識して出かけると、普段と違って赤い看板の数が予想以上に多いことに気がつかされる、そういった現象の事を指します。
Hさんの話を受け社長が返します。
「いつも神様が見ていてくれて、僕が困ると『あいつ困っているから、ちょうどいい人材を目に前に置いてやろう』って助けてくれるんですよ。本当にありがたいことです」
とご機嫌な様子でした。
困った時にあきらめることなく、自らの目を凝らして必要人材を身近なところからも探し続ける努力。それが「カラ―バス効果」を生み、通りすがりで見落としがちなキーマン人材をしっかり確保できる最大のポイントなのかもしれません。
「僕はツイてます。神様に感謝です」と、信じて疑わず嬉しそうに語るT社長。「カラ―バス効果」の話をするのはやめておきました。(大関暁夫)