活発化するIPOの死角 IRめぐる勘違いについて

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日経や東洋経済が担当者を付けてくれるのに生かせない

   一例を挙げよう。上場会社になると、原則として日本経済新聞と東洋経済新報社は担当記者を付ける。日経会社情報、会社四季報を有しているからだ。かといって、会社を訪問するのは最初のごあいさつや担当者が代わった時などで、あとは電話やメールで状況を取材するケースが多い。非上場の中堅・中小企業からみれば、メディア側からアプローチしてくれるわけだから、うらやましい話だろう。

   ところが、それを生かせない上場会社が非常に多い。適時開示に縛られているために、余計なことが記事になると担当者の責任問題になりかねないことを恐れる。経営トップはメディアに慣れていない。そもそも、広報の仕方や記者との付き合い方が分からない。結果的に、記者とは消極的なお付き合いになってしまう。アプローチしてくれる記者とも信頼関係を築けないのだから、他メディアへの積極的なアプローチもしていない。そんなケースをたくさん見てきた。それでは、適時開示以外の新製品、新技術、新サービスや企業のイメージアップ戦略などが広く大衆に伝わらない。

   一方、非上場の中堅・中小企業は何とか新製品、新技術、新サービスをメディアに売り込めないかと努めているところが多い。上場会社は、市場を通じて資金を調達できるのだから、非上場会社に比べて社会性が高い。それだけ広報面でも有利なポジションにいる。非上場会社の活力に学ぶ点があるのではないだろうか。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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