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「自分の財布から余計なカネが出ていく」感覚の有無

   私はこれを聞いて、以前上場企業D社の元社長がされたある話を思い出しました。

「サラリーマン社長とオーナー社長とでは、ものの考え方が随分違うものです。私は上場企業でありながらオーナー企業でもある会長の下で働いて、それを実感しました。例えば経費削減ひとつをとっても、私が削減の大号令を掛けても会長からは『もっと気持ちを入れて徹底しろ』とそのたび厳しいご指導が入りました。一生懸命旗振りしたのですが、いくらやってもオーナーとの温度差は埋まらない。一番の違いはなんだと思います?私は、自分の財布から余計なカネが出ていくという感覚の有無じゃないかと思いましたね」

   「自分の財布」?

   D社元社長の話を分かりやすく言うと、同社は上場企業でもオーナー企業であるが故に、経費に対してオーナーが「自分の財布から出るカネ」という考え方が強く、シビアになりがちだということです。一方Hくん以前の勤め先は、サラリーマン社長が率いる大企業だったようで、それ故に社長がいくら経費に対してシビアでも「自分の財布から出るカネ」という感覚はなく、そこに大きな違いがあったと言えそうです。

   経費に対する管理のシビアさという点からは、果たしてどちらがいいのかは一概には言えません。しかし、もしオーナー社長経営の会社で、残業手当はじめ経費に関する考え方のシビアさが原因で、社員との間に不協和音が聞こえてしまっているのなら、オーナー社長自身に「会社の出費=自分の財布からの支出」的感覚がありはしないかと、自問自答してみる必要はあるかもしれません。

   「自分の財布から出るカネ」に関しては、誰しもシビアになるのは当然です。しかし、仮に自身が100%出資していても会社は会社、個人は個人。法的には株主であるオーナーの持ちのものであっても、社員や取引先とのバランスの中で経営者は物事の是非を捉えなくてはいけません。残業手当を巡るブラック騒動の根源は、実はそんなところにあるのかもしれないと思わされた次第です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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