社会人だって間違える「バカ正直」の落とし穴
ところで、この「バカ正直」と「誠実・正直」の違い、社会人でもときどき間違えてしまいます。これが間違えてしまうと、とんでもない落とし穴にはまることに。
たとえば、1月26日(2015年)配信記事の日刊ゲンダイで「ファンは呆然・・・沢田研二がライブでブチ切れ『嫌なら帰れ!』」との記事がありました。
記事によると、1月20日のコンサートで集まったファン5000人が期待していたかつてのヒット曲は歌わず、新曲ばかり。しかも、2時間近く歌ったあとのトークでは、なぜか日本人人質事件の話題に。
「自説をとうとうと述べるジュリーに、客席から「歌って~!」という黄色い声援が・・・。すると、その声に反応したジュリー。間髪入れずにステージ上から、『黙っとれ! 誰かの意見を聞きたいんじゃない。嫌なら帰れ!』と怒鳴りつけたというのだ」
沢田さんからすれば、政治問題などを語りたい、という思いは本物であり、だからこそ、トークで日本人人質事件にも触れたのでしょう。しかし、そうした思いが本物だったとしても、それは「バカ正直の壁」なんです。お金を払って集まった多くのファンからすれば、沢田さんの歌、それも昔のヒット曲を聞きたかったのです。それが、ヒット曲はなし、しまいには政治についてのトークとは期待外れもいいところ。
政治問題を語りたいなら、そうした集会で話すか、最初から「コンサートではありますが、政治についてのトークもします」と断るべきでした。それでもなお聞きたい、というファンがいれば、それは問題ありません。
ですが、特に断ることもなく、お金を取って、期待を裏切って政治についてのトークとは、誠実さに欠ける、と言われても仕方ないのではないでしょうか。だからこそ、批判的な記事が出てしまうわけで。
沢田さんに限らず、社会人でも「バカ正直さの壁」にぶつかる人は大勢います。どうも、周囲が見えていない人が多いような気もします。
学生の皆さんには、こうした社会人を見習うことなく、
「正直・誠実に答えること、でも、バカ正直はダメ」
の意味を理解して、ぜひ気を付けていただきたいものです。(石渡嶺司)