温和に見えて「根暗に強権」 そんな経営者とは真逆な「愛ある叱責」タイプ

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   随分前の話になります。地域展開していた中小スーパー倒産のニュースがありました。古くから地場に根ざした老舗が、大手大型店の出店攻勢に敗れ倒産したのだろうと勝手に思っていました。ところがその後人づてに聞いた話によると、どうやら倒産の原因は経営者の強引なやり方に対する社員の反発だったのだとか。

   私が耳にした事の顛末はこうです。従業員に対して、正社員に残業をつけさせないのは当然で、売上ノルマを達成しない売場のパート店員も同様。正社員の休みは定休日以外なし。生鮮品管理もいい加減で、加工日や消費期限の日付改ざんはあたり前。方針に従わない社員は、昇給、賞与査定で減俸対象となるなど、聞く限りにおいては完全に法令違反の職場であったようです。結局噂が噂を呼んで、客離れ、社員離れ、商品の質低下の悪循環が店の活気を失わせ、倒産に追い込まれたのだそうです。

「売る気ないなら辞めてよし!」

その叱責、陰険?愛を感じる?
その叱責、陰険?愛を感じる?

   私がそんな裏話があるなどと全く思わなかったのは、私もお目にかかったことのある同スーパーの社長がおよそ穏やかな方で、社員に対して悪の強権を発動するようなイメージがなかったからなのです。しかし実態は、表だって動くタイプではなかったものの根暗に側近を通じてあれこれ指示をしていたようでした。

   そうかと思うと、こんなパターンもあります。

   銀行時代の取引先B社のF社長。チェーンの物販をフランチャイジーとして数店舗展開。彼はとにかく行動派で荒っぽい。私が訪問した際にも必ずと言っていいほど、店長ほか幹部社員ばかりでなく、時には一般社員も呼びつけて厳しく叱責していました。

「今の調子で店舗の売上目標が達成できるのか!気の抜けた店長はいらんぞ!」
「関連商品が散らばっていて、ディズプレイがなっていない!アタマを使えアタマを!」
「プライスカードの表示方法が顧客に向いていない!売る気ないなら辞めてよし!」

   ある者は殴られんばかりの勢いで怒鳴られ、またある者は罵声と共に提出資料を床に投げつけられる。叱責された者は、ただただうつむいてうなずくばかり。たいてい皆、嵐が過ぎ去ると肩を落として社長室を後にします。まさしくスパルタ経営と言っていいような光景が毎度繰り広げられていました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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