現代の日本において、「育児と仕事の両立」は大きな課題の1つだ。制度は確立されつつあっても、現実的に考えたら難しいという人はいまだに少なくなく、「どんなやり方が望ましいか」という議論はそこかしこで続いている。
そんな中、「育児と仕事の両立には『女性の支援』ではなく『男性の支援』こそ必要」という考えが提示され、ネット上は賛否両論で盛り上がっている。
女性に産めよ増やせよ働けよ、と言う前に
日本産婦人科学会専門医で、ポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長の清水なほみさんの記事「子育て支援に必要なのは『男性』のサポート」が、コラムサイト「All About News Dig」で公開された(2015年1月19日)。
清水さんの夫は、働きながら家事や育児も「主夫」のようにこなしていたが、数か月前から「朝7時過ぎに家をでて夜は21時過ぎに帰宅する生活」になってしまい、従来のように家事などができなくなった。その結果、夫婦ともに、ほとんど余裕のない生活に変わってしまった。この状況で清水さんは「国がやっている子育て支援ってなんて的外れなんだ!」と痛感したという。そして、こう断言する。
「国がやるべきことは『女性の支援』じゃあないと思います。必要なのは『男性の支援』です」
具体的には、「3歳以下の子どもがいる家庭の『男性』が、朝は8時半以降に家を出て、夜は18時より早く帰宅して、妻と同じタイミングで休日をとれるようにする」。家事をしたくない男性があえて残業したり、業績や昇進を気にする男性が早く帰宅することをためらったりということがないよう、「そういった働き方を『してもいいよ』ではなく、雇用側が『義務』として提供できるようにすること」が必要、と主張。
「いくら男性側に『やる気』があっても、家にいなければ何もできませんよね? 長時間労働で疲れきっていても、何もできませんよね?女性に産めよ増やせよ働けよ、と言う前に、男性の働き方を見直しなさい、ってことなんだと思います」
と持論を展開している。
夫の残業代なくなったら、妻も働かなきゃいけなくなるかも
この記事が、「育児と仕事の両立」で今まさに悩んでいる人々や、過去に身をもって実感した人々を中心に話題に。男女問わず、ツイッターなどで
「凄く同意、9時に帰っても赤ちゃん子どもは寝てるもんだよ」
「ほんとその通りだわ。8才以下の子を養育する親は(男女問わず)10時4時の勤務を義務付ければいいだけの話」
「女性の支援ももちろん大事。でも、それ以上に子育て世代真っ盛りのお父ちゃんに、子どもにかける時間を与える余裕を、日本って国全体で作ってあげなくちゃ。面倒見たくても見られないお父ちゃんはたくさんいると思う」
など、賛同する声が相次いだ。
一方、「時短勤務の義務化」などの点には反論も寄せられ、個人ブログやツイッターで、
「(当人の)意志を無視した制度で子どもを産みたいと思う人が本当に増えるの?」
「なんでも規制したり義務化すれば良いってものではないと思いますね」
「父親の残業代でなんとか妻が専業主婦やってられる家庭では、残業代なくなったら乳幼児を保育園に預けて妻も働かなきゃいけなくなるかもね」
といった声もあがっている。
賛否それぞれに理由があり、なかなか難しい問題のようだ。まだまだ議論は続きそうだ。(MM)