ある専業主婦の「優雅な生活」 若い女性が「憧れる」のも分かるかも

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   安倍政権が「女性の活躍推進」を打ち出す中、「若い女性の間では、専業主婦志向が3人に1人」という調査結果も出ています。厚生労働省が実施した「若者の意識に関する調査」では、15歳~39歳の独身女性のうち、約34%が「結婚したら専業主婦になりたい」と答えました(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計、2013年9月10日公表)。少なくない数の女性が、「専業主婦になりたい」と感じているのですね。

   日本企業の大半は、まだまだ「男性中心」。そんな企業社会で生き抜くより、温かな家庭を築く方が幸せそう。そう考える女性がいても不思議ではありません。一方で、最近では「共働き」でやっていこうという女性も多いようです。今回はそんな、対照的な生き方を選んだ女性2人の「声」を紹介します。

夫は公務員、夫の実家は資産家

いいな、優雅な家族って・・・
いいな、優雅な家族って・・・

   久しぶりに会ったS子は、上品なモノトーンの服に身を包んで、すっかり有閑マダムといった風情でした。彼女は、数年間の社会人生活を経て、公務員の夫と結婚。公務員、それも「地方上級」の夫というと、田舎では「安定していて、うらやましい!」と、羨望の的です。もちろん彼女も、それは分かっていて、謙虚ながらも満足そうな様子。夫の実家が裕福なのも、関係しているかもしれません。

   育児は大変だといいますが、実家に子供を預けて、友達と遊びに行くこともできますし、月2回の「ネイルサロン」も楽しみだとか。彼女の爪には、控えめながらも上品なネイルアートが施されていました。バッグは、イタリアのブランド、ボッテガ・ヴェネタの新作。誕生日に、義父母からプレゼントされたそうです。いいなぁ。自分以外の人からもらったお金で、おしゃれを楽しめるなんて。S子の「優雅な生活」が、だんだん羨ましくなってきました。こんなに幸せそうなら、若い女性たちが専業主婦に憧れるのも、分かる気がします。

   そう思っていたとき、「かやちゃんさぁ、子供は欲しいと思わないの?」と言われて、ハッと目が覚めました。S子の「幸せ専業主婦ライフ」に集中しすぎて、自分のことはすっかり忘れていたのです。28歳なので、子供については、もう焦るべきなのかもしれませんが、「育児に追われて仕事ができないのでは......」という不安から、先延ばしにしています。どこかで「家庭」と「仕事」を、天秤にかけてしまっているのです。

「育児より、仕事の方が100倍ラク!」

   一方で、共働きワーキングマザーのY美は、「育児より、仕事の方が100倍ラク!」と言い切っていました。Y美は事務職として働いており、先日、育休から復帰したばかり。

   「仕事にはある程度のマニュアルがあるし、話せば分かってくれる相手も多い。でも、子供はそんなに甘くないよ。急に熱を出すし、ところかまわず走り回ったり、いたずらしたりするから、いつも注意してなきゃいけない。仕事は『明日やろう』も許されるけど、育児は『今、ここ』で対処しないといけないことの連続だから、大変。仕事の方が断然、ラクだよ!」と言うY美。仕事と育児のバランスを取りながら、「忙しいけど充実した毎日」を送っているようでした。

   子育てに専念する専業主婦、S子は、夫のお金でネイルサロンへ行く幸せを感じています。不安定な今の時代、こうした生活に憧れる若い女性が増えるのも、不思議ではありません。一方で、「育児と仕事なら、仕事の方がラク」という共働きワーキングマザー、Y美の気持ちや充実感も、何となく想像できます。両者の対立を煽るのは、不毛でしょう。なぜなら、S子とY美は2人とも、「私はこっちの道を選んでよかった」と満足しているからです。どんな選択をしても、「私はこれでよかったのだ」と思えている。ちょっと大袈裟ですが、自分の選択に確信をもって歩んでいるからこそ、彼女たちの生活は「充実」しているように見えるのでしょう。「専業主婦VS共働きワーキングマザー」という対立を、無意識に前提していた自分が、少し恥ずかしくなりました。(北条かや)

北条かや(ほうじょう・かや)

1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。著書に『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』。ウェブ媒体等にコラム、ニュース記事を多数、執筆。TOKYO MX「モーニングCROSS」、NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(2015年1月放送)などへ出演。
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