多くの事例が、どこかで聞いたことがあるような内容
ではクイズをもう1問。先の18件の不正流用事件の中で、最大の被害額はいくらか?
A:約5億円
B:約10億円
C: 約15億円
答えは、なんと・・・Cである。その事件は情報・通信関連の上場企業の関連会社で起きたもので、会社が公表した被害総額は15億6000万円に上る。入社以来一貫して経理畑を歩んだ50歳男性(2014年10月逮捕)は、金庫内現金の着服、小切手の二重振出しや不正換金、預金口座からの不正出金・不正送金などのさまざまな手口を駆使して、8年にわたって横領を繰り返した。学生時代はパチンコ、会社に入ってからは競馬やtotoなどにのめり込み、「競馬で勝って元に戻せば」と思いながら深みにはまってしまったようだ。
2014年には、その他にも億単位に上る巨額の横領事件が相次いで公表された。例えば、大手総合商社では、海外子会社で経理を取り仕切っていた社員が、個人的なFX取引で抱え込んだ損失を補てんするために、約2年間で7億円相当を会社の口座から自分の口座に不正送金し続けていた。
こんな事件も起きている。鉄鋼メーカーの子会社で、グループ社員が出張時などに使用する法人クレジットカードの管理を担当していた出向者が、退職者が使用していたカードを解約せずに遊興費などに不正利用し、6年弱で3億円の損失を会社に与えた。クレジットカードの利用明細をシュレッダーにかける姿を上司に見とがめられて不正を自白したそうだ。
残念ながら、2015年も同じようなペースで企業不祥事が公表されるだろう。多くの事例が、どこかで聞いたことがあるような内容だ。「うちの会社に限って」「私の部下に限って」と思ってはいけない。「明日は我が身」と考えて、他社が公表した不正調査報告書を読み込んでみると、今まで見落としていたリスクに気づくことができるかもしれない。(甘粕潔)