「仮説の力」で「難攻不落」営業先と成約!

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   前回コラム(2015年1月8日配信)で、「仮説営業」の話を紹介しました。その続編です。

   仮説を立てて相手にぶつけるためには、質問力を高める必要があります。質問と仮説の組み合わせこそ「できる営業」の必殺技です。この組み合わせがお客様に訪問した冒頭から飛び出すと、契約までのスピードが飛躍的に早まります。

仮説がはずれていても気にする必要なし

「難攻不落」に挑むのだ
「難攻不落」に挑むのだ
「私は組織の見直しの時期ではないかと思い、その取り組みに応じた提案を準備したのですが如何でしょうか?」
「甚だ僭越ですが、この時期に勇気を持った投資が必要と考えて提案を持参しました。お聞きいただけますでしょうか」

などとぶつけた仮説には答えが返ってきます。その返答に再び質問をぶつけてお互いの理解度が上がっていくと信頼関係も高まり、正確な提案が出来るようになります。

   また、仮説がはずれていても気にする必要はありません。

「いや違うよ」「何か間違っていないか」

などと指摘されたとすれば寧ろもうけものです。間髪をいれずに

「そうですか、それは失礼しました。勉強不足で反省いたします。では、実態をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

と本当のことをしっかりと聞ける機会ができたのです。

   私も、仮説をぶつけて間違っていたことから逆にビジネスチャンスをたくさん得たことがあります。それは、入社4年目に会社として攻めあぐねている部品メーカーを担当したときの話です。過去に営業担当が10人以上変っても何も商談機会がいただけず、「難攻不落」と社内で呼ばれていた総務部長へ引継ぎに訪ねたとき、仮説を準備して訪問しました。オフィスに訪ねて応接に通されると、総務部長が登場しました。

「また担当が変わるんだね、よく変るね。もう仕事ないから諦めた方がいいんじゃないの?」

   いきなりのキツイカウンターが飛んできました。ただ、考えてください。本当に相手にしたくないなら、会わないようになるはずです。きっと何か期待する部分があるから訪問機会をいただけるのだ、と前向きに捉えて仮説をぶつけてみました。

「営業は事前学習して欲しいんだよね。でないと会う気が起きない」

「本日はお時間いただきありがとうございます。部長もご多忙の中でお目にかかれる機会をいただけるのは当社に期待されているからと勝手に解釈して、仮説を準備してまいりました。御社は、業界3位のメーカーとしてシェアアップのために新工場を設立されました。そうした積極的な投資時期にピッタリのシステムの提案をお持ちしました」

   すると、部長は少々驚きながらも冒頭の嫌味な顔つきから一転しています。

「わざわざ勉強してきていただいたのはありがたいが、新工場は前向きな取り組みではなく、コスト削減のために1箇所に集中させるためなのだよ。他の工場は、新工場の稼動に合わせて操業を止めて土地も売却する予定さ。IRレポートに書かれていると思うがね」

   仮説は大きく外れたようです。ただ、部長から初めて前向きな情報をいただく機会となりました。

「勉強不足で恐縮です。コストダウンが優先課題なのですね、では次回に改めて提案を持参させていただきます」

   こうして次回にコストダウンを前提にした提案をぶつけたところ、細かいチェックをいただいたものの、数か月後には大きな契約に至ることになりました。契約をいただいた後、部長がもらした言葉が印象的でした。

「営業は事前学習して欲しいんだよね。でないと会う気が起きない」

   仮説は間違っていても構わなくて、次につながるきっかけになることを学ぶいい機会となりました。

   さて最後に、仮説を立てる目的を改めてまとめておきましょう。仮説を立てる目的は

(1)お客様の信頼をつかむ
(2)本音を聞き出す
(3)営業プロセスが効率的になる

です。そして、仮説は繰り返しぶつけていくとかける時間も短くなり、精度も高まります。最終的には契約を目指し、仮説を何回もぶつけてください。(高城幸司)

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高城 幸司

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高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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