年初なので、「景気の良い話」がしたいと思っていたら、ある女性のことが頭に浮かびました。大手IT企業で広報を務めるT美(29歳)です。地方のバスガイドとして働いていた彼女は、22歳の時に上京。「派遣の受付嬢」から、幾度かの転職を経て、誰もが知る有名企業の「広報」の座をゲットしました。T美は、目鼻立ちのはっきりした、華やかな美人です。「バスガイドから大企業の広報へ」という彼女のキャリアを知った時、私は、「彼女が美人だから、有利だったのだろう」と思いました(我ながら浅ましい・・・)。しかし、T美のキャリアアップを支えたのは、決して「美貌」だけではなかったのです。
「ランチ合コン」で人脈づくり
T美は、バスガイドとして働いていた22歳の時、彼氏を追って上京しました。派遣社員として就職したのは、一部上場のIT企業。そこから、T美の「ステップアップ転職」が始まります。
彼女をよく知る男性は、受付嬢時代のT美を、こう評します。「美人っていうだけの子は沢山いるけど、彼女の場合は、抜群に気が利くんだよね。急な来客でも、会議室をサッと用意してくれたり、部屋の予約を忘れていても、特別に確保してくれたり。とにかく、仕事の『勘』が良かった」
彼女は受付嬢として働く傍ら、社内の「ランチ合コン」に参加します。そこで、男性社員と打ち解け、社内やIT業界の事情を、教えてもらうのです。出社前には、熱心に日経新聞を読む姿もあったとか。T美は派遣社員時代、社内で「不倫騒動」を起こしたこともありましたが、彼女からすれば、年上の男性に色々と仕事を教えてもらううちに、そういう関係になっただけ。不倫もまた、人脈を広げ、キャリアアップを目指すうちの「いちエピソード」に過ぎません。T美は、「受付嬢」として、キャリアを終えるつもりはありませんでした。
「ガッツとガッツキがある女」は出世する
派遣期間が終わった後、T美は、社内で知り合った男性の取引先に紹介してもらい、ベンチャー企業の営業職に転職します。派遣社員から、正社員へとステップアップしたのです。転職先では、持ち前のガッツを見せ、8か月で営業のMVPを獲得しました。
さらに、受付嬢として働いていた時代の知人(転職して、経営コンサルタントをしていました)を「タダ」で使い、新規事業の相談に乗ってもらいます。「◯◯さん、お久しぶりです。私、今、××ってベンチャーにいるのですが、新規事業のプレゼンを見てもらいたくて・・・うちの社長も、ぜひ◯◯さんに相談したいと言っているので、一度会ってもらえませんか?」
熱心に社長と知人男性を引きあわせ、新規事業への『がっつき』を見せます。コンサルタントになった知人も、一度は申し出を断ったものの、彼女の熱心さに思わず、無償で相談に乗ってしまいました。
ベンチャー企業で実績を上げたあと、T美は、別のIT企業に転職。受付嬢時代に、不倫関係にあった男性に教えてもらった、成長株の企業でした。その企業で「マザーズ上場」を経験し、2年後には、営業から広報へと異動。そして、29歳になった昨年、さらに規模の大きな一部上場企業の「広報」になったのです。
よく「美人は得をする」と言われますが、彼女を見ていると、美人なだけで「キャリアアップ」するのは難しいと感じます。彼女の転職を支えたのは、美貌だけではなく、(時にはその美貌を使って「不倫」などのリスクを冒してでも)のし上がろうとする「ガッツ」と、周囲の人を自分の仕事に巻き込んでいく「ガッツキ」のパワーでした。バスガイドから、大企業の広報へ。時々、そんな彼女のことが眩しく見えます。私も、T美の「ガッツ」と「ガッツキ」を見習いたい。まあ、不倫はちょっと、イヤですけど・・・。(北条かや)