「仮説営業」で脱「出たところ勝負」を

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シナリオをつくるために「お客様の状態を想像する」

   そこで「このままではまずい。やり方を変えよう」と、会うための目的を設定してアポイントを取って訪問をすることにしました。このアポイントのために「会うために理由」を考えたのが仮説営業のきっかけでした。分析すると、当時の八重洲地域には大手の子会社・不動産関連のオフィスが多かったので景気も悪かったこともあり、管理部門は厳しいコスト削減に取り組みの真っ最中でした。そこで、大幅なコストダウンの実現をテーマに同じ地域の活用事例を準備して仮説をぶつける営業を開始しました。すると驚くほどにアポイントも取れて、しかも仮説をぶつけると

「うちの問題点を想定した事前準備が立派だ」

とお褒めの言葉までいただき、大型を含めて八重洲地区から20社以上の新規契約が取れるまでに半年かかりませんでした。

   確かに訪問しようとする企業、その企業の部門、その部門の担当者に応じた「課題」が存在します。その課題を仮説としてぶつけるとアポイントも取れ、更に商談が冒頭から前にすすむようになります。では、どうしたら仮説力が高まるか説明しましょう。仮説とは、営業の訪問前に今日の商談のシナリオをつくるために「お客様の状態を想像すること」です。幾つか例をあげますと

●最近の関心があるテーマは何だろうか?
●優先順位が高い取り組みは何だろうか?
●誰かに相談したいことは何かあるだろうか?

などと思いをめぐらせてシナリオを準備するのです。こうした仮説を立てた状態で訪問するのと無いのでは大分冒頭に切り出す言葉も違ってきます。

   仮に仮説があると

「御社の課題はコストダウンと想定して今日は訪問させていただいています。私なりの想定の範囲ですが御社のコストダウンに貢献出来るプランを準備してきました。まずはお聞きいただけますでしょうか?」

   仮に仮説が無いと

「御社のことをお聞きして具体的なご提案をしたいと思います。その前に当社の事業内容と主な商品についてご紹介させてください」

   このように次の展開も大きく変ります。私が担当者であれば、仮説ありの方が「やる気」「誠意」を感じて前向きに聞くでしょうし、仮説が違っていても本当の情報を提供したくなるのではないでしょうか?逆に仮説無しの営業だと、ありきたりの会社説明や長々とした商品説明を聞かされることになり、「またかよ、眠いな」と意欲が下がりませんか?

   ただ、日々の業務が多忙だと、つい営業が出たとこ勝負になりがちです。ですから、短時間に仮説を立てられる力を身に付けるようにしましょう。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
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