2015年のトレンドは、ずばり「ドルを稼げる奴が神」というものです。
身も蓋もないですが、つまり、時代は昭和の日本に戻り、米国様や中国様からドルを頂戴できる人が生き残るということです。
ドルで稼ぐ
2014年は、アベノミクスの狂乱、日銀の緩和で、急激な円安がすすみ、対ドルレートで円は50%も安くなりました。60円台だったシンガポールドルは、もはや90円。一時期の米ドルより高くなりました。
円建てで収入を得ているシンガポールの友人はもはや限界とのことで、外国に脱出するということです。
上海にいるひとは、人民元が12円から20円を突破しそうな勢いで、東京の物価のやすさに舌を巻いています。
過去数年2010-2013あたりは、高い円を使って積極的に海外に投資し、空前の海外進出ブームが訪れましたが、その兆しに大きな変調が訪れ、2015年はそのトレンドが固いものになるでしょう。
もちろん、まだほとんどの人が「日本人なんだから、日本円を稼げばいい」とか、「ドルは欲しいが人民元はいらない」と思っているとおもいますが、ドルや、人民元が欲しいという方のためだけに、個人のスキルの観点から、2つの流れを説明します。
1つは、外貨建てで賃金をもらうことです。海外で働いている人の中には、円建てで本社から給与をもらうのではなく、ドル建てでもらっているひともいます。もしくは、3-4年を海外でキャリアをつんで実績があれば、現地で外資系の企業に転職することができます。外資系の企業でドル建てなりシンガポールドルで給与をもらえば、「神」になるわけです。
つまり何が言いたいかというと、結局、強い奴は、その時々の最強の通貨で給与が貰える場所に転職出来るということです。
2つめのキーワード「インバウンド」
2つめは、インバウンドです。日本は長らく加工貿易で物を輸出して外貨を稼いでいました。アウトバウンド、外に物を売るということです。
これに対して、インバウンドとは、外国の人に日本にきてもらって消費してもらうということです。
日本に訪れる外国人旅行者の数は激増しています。政府観光局によれば、日本を訪れる外国人旅行者は、2013年で、約1000万人。2014年は、1300万人を超えたといわれます。震災で落ち込んだ2011年が600万人なので、アベノミクス以降、倍になっているという計算です。特にビザの緩和で、タイからの旅行者が6位になるなど、大きな変化がみられています。
つまり、ドルを得るには、海外にいって稼ぐというのはもちろん、日本に迎えて稼ぐという形態が新しく加わろうとしているということである。
「外にものを売る」→「内にいて外に売る」
ということになります。
こういう時にどのようなスキルが必要になってくるのか。2015年以降の日本人のキャリアにおいて、いちばんのスキルギャップがあらわれるのはこの分野でしょう。
すでに私の身の周りでも、日本を訪れる外国人向けのビジネスを立ち上げるひとがどんどん現れています。タイやシンガポールの空港にいながら日本のSIMが買えるといったサービスなど、インバウンドの事業が注目されてきているのです。
ギャップの「橋渡し」ができる
内にいて外に売るには、どういうスキルが必要でしょうか。重要なスキルは、語学と、標準化です。
語学は、英語くらいは最低でも話せないと困ります。もちろん日本にくる旅行者は韓国や中国やタイなどのアジア圏が圧倒的なので、中国語やタイ語といったものが加えて話せれば武器になります。
英語+タイ語といった語学に加えて、なんらかの具体的スキルがあって、外国人にターゲットを絞れば、そういうサービスはあまりありませんから1番になれる可能性があります。
例えば、私の知人は、英語+ベトナム語ができ、行政書士の資格をとって開業しました。行政書士だけなら食うのは厳しいですが、ベトナム人の日本国内の手続きに特化することで、強い競争力を得ています。
もうひとつの「標準化」は、なんども私がここに書いては、否定されまくっているものです。外国人を迎えるのですから、彼らが理解できるようなわかりやすい手順や手続き、案内、習慣に合わせるということが大事です。日本以外ではほぼ共通のルールになっているが、日本だけは違う、というものを、共通なものに合わせていくということです。
郷に入れば郷に従え、日本に来たら日本のやり方に従え、という反論ばかりに会いますが、ドルを稼ぐには、海外の人に来てもらわないといけません。
日本にいて日本の発想だけをしていたらわからない、日本標準と他国標準のギャップに気づいて、その間を橋渡しするサービスができるひとは、ドルを稼ぐことができるでしょう。
2015年は、国内にいながらドルを稼ぐというビジネスモデルと、それを出来る人材が注目されてきて、その分野が大きく成長していくとおもいます。
従来からのアウトバウンドの動きにくわえ、インバウンドで求められるスキルやキャリアについても本年の連載では積極的に触れていこうと思います。(大石哲之)