18歳の「普通の女の子」らしい一面
「京都ブーム」や、舞妓さんを題材にした映画のヒットもあって、舞妓に興味をもつ少女は増えているそうです。が、サツキさんのように、18歳まで続くのは少数派。舞妓さんになるには、置屋さんで「仕込み」と呼ばれる1年の修行をしなければなりません。京ことばを覚えたり、先輩の手伝いや掃除洗濯をこなしたり。親元を離れての厳しい生活に、辞めてしまう子も多いのです。
その頃からサツキさんを知っているママは、「昔はサっちゃん、めっちゃ細かったなぁ。今の方がふっくらしてええわ」と言っていました。上品な京ことばで、「ご飯が美味しくて、つい食べ過ぎてしまう」と笑うサツキさんですが、舞妓さんの仕事は、苦労も多いのかなぁと思いました。
舞妓になって3年目のサツキさんは、さすが、振る舞いもしっかりしています。お客さんを積極的に喜ばせるというよりは、彼女がそこにいるだけで、場の空気が和むような感じ。さすがプロ・・・!と思っていたら、18歳の「普通の女の子」らしい一面を見ることもできました。お客さんから、「サツキさんの歌声が聞きたい」と言われ、彼女が選んだ曲は、若者に人気の「JUJU」。しかも、普段からカラオケが好きなようで、採点結果はなんと「98点」。みんなで「サツキちゃん、すごい!」と大絶賛です。
それまで「92点」が最高だった常連さんは、ちょっと対抗心を燃やしたのか、「自分も、この曲なら最高得点を出せるぞ」と、河島英五の「酒と泪と男と女」を、2回連続で熱唱。が、結果はむなしく「85点」「80点」......。肩を落とす常連さんにも、優しく、「私は1曲、歌わせて頂いただけで十分です」と、京ことばで微笑みかけるサツキさんでした。あれから5年。彼女は、舞妓を卒業し、立派な「芸妓」になっているでしょうか。今でも時々、思い出します。(北条かや)