「女性が社会進出すれば少子化になる」は妄想だ

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   女性の社会進出を促進するというのが現政権の成長戦略の一つだが、たまにこんな批判をする人がいる。

「女性が社会進出するともっと少子化が進むから成長戦略としては逆効果だ」

   女性が社会進出すると少子化が進むのか。それとも、女性にもっともっと社会進出してもらった方がプラスなのか。いい機会なので簡単にまとめておこう。

「仕事が忙しくて子作りする余裕がない」のか?


   「女性が社会進出すれば少子化が進む」論者は、おそらくこういう女性像をイメージしていると思われる。

・仕事が忙しくて恋愛する暇がない
・仕事が忙しくて子作りする余裕がないし、育児も大変なので子供は一人で打ち止め

で、社会進出させないで家に閉じ込めておくとこうなると想像しているのだろう。

・余裕のある家事手伝いになれて、恋愛し放題!
・家にこもって家事し放題、子作りの体力もばっちり温存

   自分で書いといてなんではあるが、全然説得力を感じない。というか「閉じ込めておけば増えるだろう」って、なんだか犬猫の話をしているみたいだ。もちろん探せば似たような人もいるのだろうが、少なくとも出生率を云々するほど大勢力として存在しているとはとても思えない。


   逆に「女性にもっともっと社会進出してもらった方がいろいろプラスだ」と考える立場の人は、筆者自身も含め、こういう女性像をイメージしている。

・育児休業を取るとキャリアが事実上閉ざされてしまうのでなかなか取れない
・出産を機に離職して子育て一巡後に再就職するとパートや契約社員の職しかなく、生涯賃金が一億円以上減ってしまう
・学歴もあるし、本当はもっともっと働きたいが、夫の扶養に入っていた方がトクなので我慢している

   こっちの方が実際の人物像をイメージできるという人の方が多数派だろう。

世界が採用した処方箋は「女性の社会進出をさらに後押しする」


下記表より筆者作成
下記表より筆者作成

   ちなみに、女性の社会進出と並行して出生率が低下するという傾向は、戦後、先進各国で見られた現象だ。そして、やはり「女性の伝統的な役割を無視したからだ」という議論をする人も(40年くらい前には)各国で見られた。


   でも、その後に世界が採用した処方箋はそうした議論とは真逆に「女性の社会進出をさらに後押しする」というものだった。出産や育児がキャリアにマイナスにならないような流動的な(要するに敗者復活の容易な)環境を作るのが目的だ。実際、出生率を2.0近くに回復させることに成功した先進国は、女性の社会進出度でも優等生だ。


●図の合計特殊出生率は「WHO世界保健統計2014年」より、女性の社会進出度は「世界経済フォーラム・ジェンダーギャップ指数ランキング2014年」より
●図の合計特殊出生率は「WHO世界保健統計2014年」より、女性の社会進出度は「世界経済フォーラム・ジェンダーギャップ指数ランキング2014年」より

   一方で、イスラム圏のように、まだまだ男尊女卑で高い出生率を維持している国もある。



   もちろん、世界有数の経済大国であり、別にイスラム文化圏でもない我が国がどちらの道を目指すべきかは明らかだろう。というわけで、女性が社会進出するから少子化になるんだぜ的なことを周囲に話したり、堂々と著名人がコラムに書いちゃったりするのは、おつむが(イスラム過激派組織)イスラム国レベルだと宣言するようなものなので、良い子は真似しないようにしましょうね。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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