高い目標でも達成できるという実感を「具体性」をもって与える
私は社長の目標必達理論は素晴らしいと思いながらも、高い目標を現場に与え続けて、どうして所長に「やれる」と思わせることができているのか疑問に思いました。そこで過去に現場の所長経験も豊富な同社の営業部長に、社長の目標設定に関する現場の受け止め方はどうなっているのか尋ねてみると、意外な答えが返ってきました。
「社長は一見、高い目標を現場に一方的に押し付けているかのように思われがちなのですが、実は日常的な所長との同行営業などを通じて所長以上に各営業所の営業実態を研究しています。加えて豊富な経験があり、自分が所長だったらという観点から『主要先はこの分野をこう攻めてみろ』、商材別では『この商圏ではライバルとの比較を見せてこう売ったら新規先に売れる』といったアドバイスをすることで、高い目標でも達成できるという実感を所長に具体性をもって与え、『その気』にさせ本気モードに火をつけるのです」
営業部長の話から分かったことは、各営業所に高い目標を割り振った社長自身が、誰よりもまずそれを達成できる実感を持っているということ。そしてその実感の根拠を具体的道筋として示すことで、所長がその実感を共有できているということなのです。
先の書籍の「目標達成確率は、目標を達成できると思っている社員の比率に比例する」の続きとして、「そしてその比率を高めるためには、目標設定者が目標達成に向けた道筋を具体的に提示できること」という文言があることを実感させられるお話でした。
数字ありきの目標を提示してニンジン作戦に出てみたものの、毎度惨敗して途方に暮れる経営者や管理者をよくお見かけします。目標設定者自身がその達成を実感できない目標は、どんなニンジンをぶらさげてもまず届かないと思った方がよろしいでしょう。目標達成に向けては、社長自身が達成を実感できる具体策を社員と共有することがポイント。そのためには、現場に学ぶことを忘れた目標数字の独り歩きをさせないことが重要なのです。(大関暁夫)