「女を売りにする」こと
「ホステス歴があるから雇えない」という主張は、私たちの中にあるドロドロしたホンネを刺激します。夜のお店で働く女性への差別がいけないことは分かっているけれど、自分の中にもそうした「差別心」がまったくない訳でもない――それを刺激されたようで、モヤモヤする人が多かったのです。
この、さっぱりしない感じを、「それでいいのです」と肯定するような記事が、フェイスブックで1万件以上シェアされました。藤島佑雪氏によるコラム、「銀座ホステス緊急寄稿:日テレ女子アナ内定取り消され事件、わたくしこう思いますの」(GQJAPAN 、2014年11月25日)です。銀座のホステスとして働く彼女は言います。
「ホステスだって立派な職業。別にいいじゃないかとおっしゃるみなさまに問いたい。じゃあ、履歴書やお見合いの釣書に積極的に書くべきですか?書いたらプラス評価になりますか?」「アナウンサーやモデル、芸能人になりたいのに、水商売に手を染めちゃう子は脇が甘い」。
ツイッターでは記事に対し、「素晴らしい。こういうのが『正論』だ」と、共感を示す人も多いようです。現役ホステスが自ら「職業差別は仕方ないと受け入れている」と言ったからこそ、説得力をもって支持された側面はあるでしょうし、彼女の主張が、「差別はいけないよね、でも差別しちゃうよね」という、自分たちの揺れるホンネを「免罪」してくれたと受け止めた人がいた、という部分もあるのではないでしょうか。
私はキャバクラで働いてみて、「女を売りにする」ことが、この社会の至るところで、当たり前に行われていることを実感しました。ホステス業も、テレビで視聴者に笑いかける女子アナも、女性としての魅力をお金に変えるという点では同じだと私は思います。ところが、ホステスは差別され、方や女子アナは、清廉なイメージでもって、お茶の間のアイドルになる。その落差に違和感を覚えつつも、どこかで納得してしまう。私も含め、そんな人たちのモヤモヤを刺激したからこそ、「女子アナ内定取消」は、人々の関心を惹きつけてやまないのでしょう。(北条かや)