話上手とコミュニケーション上手は別物
なるほど、いかにもオーナー企業にありがちな旧時代的賞与評価とフィードバック状況ではあります。なぜ、上乗せした者にはそれを伝え、減らした者には伝えないのでしょうか。
「理由は簡単。経営者は投資に対しては効果を求める。上乗せ分は言ってみれば評価した者への投資だから、投資をより効果的にするために評価しているぞと伝える。逆に減らした者は投資をしていないから、無理に伝えなくともいいのだよ。それと・・・」
やや言いにくそうにしながら、社長が続けました。
「マイナス評価は言いにくいじゃないか。言われる方だって気分が良くない。そりゃ、お互いのために言わぬが花ってものだよ。金額を見て、『あーこんなに減ってしまってがんばらなくちゃ』と思ってくれればそれでいいと思うよ」
F社長はシャイなのですが、私はこの話を聞いてシャイということ以上にコミュニケーションが下手な社長だなと思いました。一方的なコミュニケーションしか思い浮かばないことに、F社長のコミュニケーションの下手さが表れています。
つまり、相手にとってのマイナス情報を一方的に伝えようとするから、それは自分にとっても相手にとってもマイナスでしかないと思っている。シャイな人ほどコミュニケーションは一方的になりがちです。F社長は話し上手で有名な方なのですが、話上手とコミュニケーション上手は別物であるという典型的な例でもあります。