教員、保育士...資格系学部出身者は一般企業に就職できない?

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   前回は資格がないと嘆く学生が資格を取ると丸くなる、という話でした(ウソ)。

   今回はその逆、資格取得が前提の学部に所属している学生が就活に臨むとどうなるか、これがテーマです。資格がなければないで苦労。あればあったで苦労。隣の芝生は青く見えるとはよく言ったものです。

資格系学部生が苦戦を思い込む理由

資格の勉強、勉強っと
資格の勉強、勉強っと

   資格のない学生からすれば、資格を持つ学生はうらやましい限りです。

   確かに、その資格を生かした業界・職業に就職する分には何の問題もありません。問題はそれ以外、すなわち、持っている資格とは無関係の業界・企業に就職しようとするときです。

   非常に多いのが教員養成系学部。それと、一般大学・学部で教職課程を履修している学生です。どちらも、教員免許取得を目指し勉強を続けるのでいいじゃないか、と思うのですが、当の学生は必ずしもそう思ってはいないようです。

   捕まえて話を聞くと、就活前にはほぼ全員が口をそろえて言います。

「教員免許があるのに、なんで民間なのって聞かれそう」
「先輩の学生は、『どうせ教員になるのであって、うち(民間企業)は本命じゃないんでしょ』と圧迫面接で落とされた」

   教職課程の学生だと、しまいにはこういうことを言い出す学生もいます。

「いっそのこと、教員免許を取るのをやめようと思います。でも、せっかく頑張って続けてきたので取っておきたい気持ちもあるし・・・。どうすればいいですか?」

採用担当者は教員免許をネガティブに見る?

   採用担当者に取材すると、確かに教員免許取得を目指す学生に対して、ネガティブに考える人がいることは確かです。

   実際に、教員採用の練習として民間企業を受ける学生もいますし、民間企業・教員採用の「併願」で最後に民間企業の内定を辞退して教員を選んだ、という学生もいます。

   ネガティブにとらえる採用担当者はそうした経験をお持ちか、あるいは内定辞退を警戒している方ばかりでした。

   では、過去に教員採用が理由で内定辞退された採用担当者が全員、ネガティブにとらえるか、と言えばそうでもありません。

教員免許持ち学生をプラスに見る理由

   採用担当者は、内定辞退の経験がある方を含め、なぜ、教員免許を持つ学生をプラスに見るのでしょうか?

   多くの採用担当者は、勉強熱心さをその理由に挙げます。

「教員養成系学部の学生はコツコツ勉強する真面目なタイプが多い。地味な仕事でも頑張ってくれそう」
「教職課程だと、通常の勉強に加えてわざわざ教員免許取得のために勉強するわけで、その努力は買える」
「何の勉強もしていない学生よりは、はるかにマシ」

   教員免許は取っておきたい、という学生の心情も理解されている模様。

「教職課程を取ったから、教員免許は取っておきたい?最後までやり遂げたい、ということだろうし、それはそれで理解できる」

   2016卒採用の場合、教育実習の時期(大体、6月ごろが多いです)が企業・業界によっては選考時期と重なります。教育実習を受け入れる学校側も、実習中の欠席は認めがたく、教育実習中に就活を両立することはほぼ不可能。このスケジュール管理をどうするかが大変ですが、それさえどうにかできれば問題なさそうです。

学生が言う「圧迫面接」は素朴な疑問が元

   では、教員養成系学部やそれ以外の資格系学部の学生がよく話す、「圧迫面接」についてはどうでしょうか。

   確かに、教員養成系学部なら教員、資格系学部、たとえば管理栄養士なら管理栄養士に関連する企業以外だと、

「どうして、うちを受けるの?(学生が取得している)資格とは無関係なのに?」

との質問が出そうです。

   採用担当者に取材すると、

「え?それが、圧迫面接になるんですか?」

と、逆に聞かれました。

「だって、教員養成系学部って、ほとんどが教員になるんでしょ?それなのに、うちのような民間企業を受けるなら、そこは素朴な疑問として聞くよ。それが圧迫面接?だったら何を聞け、と?」
「圧迫しているつもりはないんです。なぜ、方向転換をしたのか。教員に向いていないと思った、とか、民間企業を受けたいと思うきっかけがあった、とか、何でもいいのですが・・・」

   総合職採用の場合、学部は教育学部だろうが文学部だろうが理工学部だろうが無関係です。企業にとって欲しい人材かどうか、それがすべて。

   私の高校時代の同期も東京学芸大の数学だったか、理科だったかの課程に進みました。その教員免許も取ったはず。ところが、就職先は某アパレルメーカーの総合職。現在はこども服ブランドのリーダーをやっています。こういう例は山ほどありますので、あまりデメリットがどうこう、と深く考える必要はなさそうです。

「どうせ最後は教員になるんでしょ」

と言われたら、

「教員に就職する気はない。ただ、せっかく履修した以上、教員免許は取っておきたい」

ときちんと説明すれば納得する採用担当者も多いのではないでしょうか。

教員以外の資格系学部は?

   それでは、教員以外の資格系学部はどうでしょうか?

   取材すると、教員養成系学部・教職課程とほぼ同じでした。

   なぜ、その資格系学部と関連する職業・業界以外を受けようと思ったか、ネガティブに評価する理由、ポジティブに評価する理由などは大体同じです。

   自動車販売会社や住宅メーカーなどからは、保育士や幼稚園教諭、社会福祉士などを評価する意見もありました。

「家族連れ、子連れで来る客もいるし、子供の相手ができる社員は全員とまでは言わないが、1人は欲しいところ」
「高齢化社会を迎えた現代において、高齢者の事情が分かる社員は採用しておきたい」

資格取得に失敗した学生は?

   こうした資格の話をすると、難関資格を取得しようとして失敗した学生からも質問を受けます。難関資格とは、税理士、公認会計士、司法書士など。法科大学院を目指していたけど途中で方向転換した、という学生もたまにいます。

   彼らに共通しているのは、勉強一辺倒でアルバイトもサークルも特にしていない、というものです。

   結論から言えば、こちらも極端なマイナスにならず、教員養成系学部・教職課程や資格系学部と同じ。

「資格取得まで行かなくても、コツコツ勉強してきたのであれば、その努力を評価したい」
「難関資格を目指して失敗した、という話は学生時代に大きな挫折をしていることを意味する。見切りを付けた、という点でプラスに評価できるし、その過程は聞いておきたい」

   資格があってもなくても、隣の芝生が青く見えるのはどの学生も同じ。隣の青さを嘆くよりは、自分の話をした方が内定には近づきやすそうです。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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