「男を使う」タイプは2種類いる
中村うさぎさんのエッセイ、「男を使うヤツ」(『死からの生還』文藝春秋、に収録)には、彼女が仕事関連で、「男を使われた」場面が出てきます。いわく、引越の営業マン相手に値引き交渉をしたところ、いきなりキレて、高圧的な態度に出られたというのですね。客が女性だけだったのを見透かしたような感じだったらしく、「ああ、ここで『男』を使うんだな、こいつは」と感じたそうです。うさぎさんに言わせると、討論番組などで声高に相手を怒鳴りつけ、反論を封じる「オヤジ」も、この手の「男を使う」タイプだといいます。
仕事で「女を使う」女性は、相手への媚びが入っていることが多いものですが、「男を使う」のは、「相手を威嚇する」タイプが多いということでしょうか。私も実は、引越の見積で、営業マン相手に、「来て頂いてすみませんねぇ」と丁寧な調子で対応していたところ、値段交渉の段になって、いきなり高圧的な態度を取られ、怖くてそのまま契約してしまったことがあります。
この話を、知人の営業マンにしてみたところ、「仕事で『男を使う』って、何も相手を威嚇するだけじゃないと思うよ」との反論が返ってきました。彼はいわゆる「イケメン」タイプですが、女性を相手に仕事をする際は、レディーファーストを心がけ、時には思ってもないお世辞を言って持ち上げ、軽い「恋愛感情を抱かせて仕事を上手く進めることもある」そうです。
なるほど、「女を使う」には「相手への媚び」の1パターンしかないけれど、「男を使う」には、「男らしく相手を威嚇する」のほかにも、「女性を気持ちよくさせ、こちらに有利な交渉を進める」というパターンもあるのか......と、感じ入った次第です。同じ「男を使う」なら、後者のほうがまだ、マシなような気もしますが、皆さんは、どう思われるでしょうか。(北条かや)