今回は、上司の立場からみた「理想的な部下」について、社員定着コンサルタントの大野敬浩氏(株式会社リーダーラボ 代表)に解説してもらった。どんなスキル習得よりも、直属上司の「覚えめでたさ」こそ部下にとって有益なものかもしれない――。
「使える」社員は厚遇され、そうでない場合は冷遇される
昨今は人手不足・人材不足が大きな問題になっています。新卒の求人倍率も確かに高まってきています。しかし実際に各社内を見渡せば、すべての社員が大切に扱われているわけではなく、「使える」社員は厚遇され、そうでない場合は冷遇されるものです。さて、使える部下、つまり上司が「手放したくない」と思う部下の条件とはいかなるものなのでしょうか。
□安定して計算できる部下
上司は様々な目標や業務を部下に割り振ります。相当な結果を期待できるハイパフォーマーが最も喜ばしいのですが、そうでなくてもいつも安定的に結果を出す部下は心強いものです。突出していなくとも計算できる部下は絶対に手放したくない存在です。
□上司のホンネを理解しようとする部下
上司はチームを率いる存在としてホンネでは語ることが許されず、建前として語ることも多いといえます。そんなとき、ホンネを引き出し、理解してくれる部下がいたら心強いものです。上司の「本当はこの仕事を手伝ってほしい」という気持ちを引き出し、それを実行したとしたら上司は部下を手放すことなどできません。
□上司の行動に続き、二番手を演じられる部下
上司がチームの変革策などを伝えることがあるでしょう。しかし多くの部下の心の中には変革に抵抗する気持ちが生まれるものです。部下たちが逡巡しているとき、ある部下が「いいですね、やってみましょうよ!」と一声挙げてくれたらどんなに助かるでしょう。上司に続く二番手を演じられる部下は非常に魅力があるものです。
□論理的ではあるが、感情面に配慮できる部下
原因分析や対策立案などを論理的に発想できる部下が必要です。しかし一方で上司の感情面にも配慮が必要でしょう。しょせん上司も人の子、論理的には正しくとも、感情的に受け入れられないことがあるのです。このあたりの配慮ができる部下は大変貴重です。
□さりげなく自己アピールする部下
自己開示しない部下には不信感が生まれるものです。さりとて、あまりにも自己アピールが強すぎるのも鬱陶しく感じるものでしょう。自らのキャリアプランや挑戦したい仕事などについて、さりげなく自己アピールすれば部下に対する理解が進み、助けてあげたいと思うものです。
理想的な部下とは、実は最強の会社員
□上司とコミュニケーションを図ろうとする部下
上司からホウレンソウを取りにいかねばならないコミュニケーション下手な部下ほどイライラさせるものはありません。自ら、早めにホウレンソウを行う部下、特にちょこちょこ相談してくる部下はかわいいと思えるものです。相談するということは上司の能力を認めているということですから。
□上司を信頼しようと努める部下
たとえ上司に疑わしい行動があったとしても上司を信頼しようと努める部下には、上司も信頼で返したいと思うものです。一方、不信の目で見られたら、上司も同じように不信感を抱くことでしょう。上司を最後まで信頼する部下を上司は信頼するのです。
□逆境でも逃げない部下
人間誰しも難しいこと、怖いこと、見たくないこと、聞きたくないことを前にして「逃げたい」という願望に襲われるものです。しかし上司はそこから逃げるわけにはいきません。上司とともに逆境に挑む部下を上司が手放すわけはありません。
□成長意欲を示す部下
目の前の仕事を頑張るだけでなく、自身の器を大きくしようと成長に励む部下には未来への期待が膨らみます。意欲を示してくれれば、新たな仕事を与える、勉強時間を確保できるよう便宜を図るといったサポートもできることでしょう。
□大人だな、と思える部下
わがままな態度や発言がなく、大所高所から物事を見渡すことができ、終始落ち着いた態度で仕事に臨むことができる部下、つまり「大人だな」と思える部下と共に働けることを上司も誇らしく思えるものです。部下から学びたいとさえ考えるかもしれません。こんな部下を手放すはずがないでしょう。
――以上10条件のうち、あなたはいくつ当てはまりましたか。理想的な部下とは、実は最強の会社員と言い換えられるものなのです。
(月刊『人事マネジメント』編集部/2014年7月号~12月号連載「リテンション5つの力」株式会社リーダーラボ 代表・大野敬浩著)