「WhatsApp(ワッツアップ)」というアプリをご存知だろうか。日本ではシェア10%以下とLINEに大きく遅れを取っているが、世界ではアクティブユーザー数が5億人、そのうち70%が毎日利用していて、毎日100万人単位でユーザーが増えているといわれる世界最大のメッセージングアプリである。
機能は、LINEよりもシンプル。無料でテキストや写真、動画、音声を送信することはできるが、通話機能はない。スマホのアドレス帳に登録された電話番号をアカウントに利用するため、ユーザーがお互いの電話番号を知っていればWhatsAppでつながることができる。
1年目は無料。利用料発生は2年目以降
世界で1日に送信されるメッセージは160億件、送受信される画像は5億件にのぼると報じられている。ちなみに、相手とチャットする画面の背景を自分の好きな画像に変更できるなど、カスタマイズができるのもユーザーにうけているようだ。
2014年2月19日にはFacebookが160億ドルという巨額で買収すると発表した。マーク・ザッカーバーグCEOも「WhatsAppは10億ユーザーを目指す途上。信じられないほどに価値がある」と絶賛している。
WhatsAppの収益源はユーザーからの課金である。しかもゲームなどではない。ユーザーはアプリを使うこと自体にお金を払わなければならないのだ。それでここまで広がったのは驚きだ。1年目は無料、2年目以降は年間99セントの利用料が発生する。
「あなたの個人データは視野に入っていません」
アプリの多くが広告収入で運営している中、WhatsAppはそうしない。その理由について、CEOのJan Koum氏が公式のブログで語った内容(2012年6月18日)は、一見の価値ありだ。日本語版の一部を抜粋する。
「昨日見た広告を思い出したり、『明日はどんな広告を見るだろう』と広告を楽しみにする人など誰一人いない。しかし、友達とチャットできたことを喜んだり、チャットできなくてがっかりしたことは誰だってある。(中略)
広告を載せている企業では多くの開発チームがデータマイニングに時間を費やし、より多くの個人情報を収集できるようソフトウェアを改良し、(中略)結果、あなたのブラウザーやモバイル画面に表示されるバナー広告が若干調整されるだけだ。(中略)あなたの個人データは視野に入っていません。単に興味がないのです」
こうした姿勢に安心感を持つユーザーも少なくなさそうだ。広告に頼らない有料モデルが「世界」を制するのか。ロイター報道によると、買収を完了した、ザッカーバーグFB・CEOは2014年10月9日、WhatsAppについて「近く利益を生む見込みはないとの見解を示した」そうだ。その将来性に注目していきたい。(岡徳之)